「人材不足か否か」の議論は終わった|国が2026年に同時に動かした2つの政策を読む

はじめに

外国人雇用をめぐる議論は今も続いています。

「人材不足ではない、日本人を採れ」「外国人を雇う前に労働環境を整えろ」「外国人に頼るのは経営者の甘え」

しかし行政書士として在留資格の申請支援に携わってきた立場からはっきり申し上げます。

国はすでにこの議論を終わらせて、次のフェーズに動いています。

2026年に入って、国は外国人雇用・移民政策に関わる重大な決定を立て続けに行いました。「人材不足か否か」という問いを議論している間に、国は実行フェーズに入っています。この記事では、その2つの政策を一次ソースから読み解きます。


2026年に国が同時に動かした2つの政策

政策① 令和8年1月23日:関係閣僚会議決定

高市内閣総理大臣の指示のもと、「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」が設置され、「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」が決定されました。

この決定の背景として、同資料はこう記しています。

在留外国人数は令和7年6月末時点で395万6,619人と過去最高を更新し、平成16年と比較すると約2倍。出身国・地域も196か国・地域に拡大しています。

つまり国はこの現実を「前提」として受け入れた上で、制度設計に入っています。「外国人を増やすかどうか」という議論ではなく、「すでにいる・これからも来る外国人とどう共生するか」という実行の議論です。

この対応策では、在留資格の審査厳正化(「経営・管理」「技術・人文知識・国際業務」「留学」等の適正化)と同時に、共生社会の環境整備が具体的施策として明記されています。

政策② 令和8年5月20日:中小企業政策審議会

同じ2026年の5月20日、中小企業庁は「労働供給制約社会における中堅・中小企業の『稼ぐ力』強化戦略」を審議会で発表しました。

「労働供給制約社会」とは、人口減少によって働く人の数が構造的に減り続ける社会のことです。審議会資料にはこう明記されています。

「人も中小企業も数よりも質であり、経済の供給力強化のため、『強い中小企業』を作る必要がある」

数値目標として、中小企業の付加価値労働生産性を5年で15%向上させ、2040年の名目GDP1000兆円への貢献を目指すとしています。


この2つの政策が示す「国の方向性」

一見別々に見えるこの2つの政策は、同じ方向を向いています。

政策① 閣僚会議決定(1月)政策② 審議会戦略(5月)
前提外国人395万人超は「所与の現実」労働人口減少は「構造的制約」
方向性受入れ適正化+共生環境整備数より質・付加価値向上
キーワード「秩序ある共生」「稼ぐ力」

どちらの政策も、「人の数で解決する時代は終わった」という認識を共有しています。

外国人を受け入れる。ただし「安く使う」でも「数を補填する」でもなく、秩序ある形で、付加価値を生み出す形で。これが2026年の国の立場です。


「人材不足論争」が本質を外す理由

厚生労働省の公式発表によると、外国人労働者数は令和7年10月末時点で257万1,037人、届出義務化以来過去最多を更新しています。

この数字を前に「人材不足ではない」と言う意見は、現実の数字と乖離しています。一方「外国人でどんどん補えばいい」という意見は、国が描く「数より質」の方向性と逆行します。

どちらの主張も、国がすでに次のフェーズに移行している事実を見ていないという点で、同じ限界があります。


在留資格の申請支援の現場から見えること

私が在留資格の申請支援をしていて感じるのは、この変化がすでに審査の現場にも反映されつつあるということです。

「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」等の在留資格は、今回の閣僚会議決定で適正化の対象として明示されました。審査は今後さらに厳正になります。

そのような状況で、申請が通る企業と通らない企業の差はどこにあるか。私は申請支援の相談を受けるとき、必ずこう問います。

「この方を採用することで、御社の付加価値はどう上がりますか?」

「人が足りないから」という採用理由では、審査上も、国の政策の方向性においても、評価されにくくなっています。外国人雇用が「稼ぐ力の強化」につながるものかどうか。この問いに答えられる採用設計が、今後の在留資格申請の実質的な前提になっていきます。


まとめ

2026年、国は2つの政策を同時に動かしました。

「外国人との共生社会」の実行(1月)と「労働供給制約社会における稼ぐ力戦略」の発表(5月)。この2つは矛盾しません。どちらも「数より質」という一つの方向を向いています。

「人材不足か否か」という議論は、国の実行フェーズから取り残された議論です。

経営者として、あるいは外国人雇用を検討する立場として、今問うべきことは一つです。

「この採用は、付加価値を高めるためのものか」

この問いを起点に外国人雇用を設計できた企業が、在留資格の取得においても、国の支援制度の活用においても、次のフェーズで評価される企業になります。


一次ソース:

外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策(令和8年1月23日 関係閣僚会議決定) https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/gaikokujinzai/index.html

中小企業政策審議会 第45回(令和8年5月20日)配布資料 https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/soukai/045/045.html

厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68794.html


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