経営管理ビザの不許可は、申請者にとって深刻な結果をもたらす。
会社設立にかけたコスト、準備に費やした時間、そして日本での在留継続——これらすべてが不許可一つで崩れる可能性がある。
2025年10月の改正以降、審査は「形式要件を満たしているかどうか」から「事業の実態があるかどうか」へと重心が移っている。書類の数や様式よりも、実態の立証が合否を分けるようになっている。
この記事では、申請取次の実務から見えてくる不許可の主な理由を整理する。
不許可になる理由①:資本金の「出所」が説明できない
資本金3,000万円が払い込まれていても、その出所が不明確であれば不許可になるリスクがある。
入管庁は資本金の金額だけでなく、「どこから、どのように調達したか」の形成過程を確認する。短期間での多額の入金、送金元が不明確な資金移動、一時的に借りて申請後に引き出す「見せ金」——こういった状況は審査上の問題になる。
準備すべき資料は、送金記録・海外口座残高証明・借入の場合は金銭消費貸借契約書など、資金の流れを時系列で説明できるものだ。
不許可になる理由②:事業の実態が乏しい
2025年改正で入管庁が明示したのが「経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、在留資格に該当する活動を行うとは認められない」という基準だ。
具体的には以下のようなケースが問題視される(入管庁公式QA・問19より)。
- 業務の大半を外部委託し、申請人本人が日常的に経営活動を行っていない
- 具体的な事業内容や財務状況など、経営者として把握すべき情報を把握していない
「会社は存在するが、経営者が経営していない」状態は不許可になりやすい。
不許可になる理由③:事業所の実体がない
自宅兼事務所は原則として認められない——これは2025年10月の改正で入管庁が公式に明示した。
加えて、バーチャルオフィスのみで実体のある執務空間がない場合も問題になる。入管庁の公式QAでは、事業所の広さについて「一律にお答えすることは困難だが、改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する必要がある」としている。
審査では賃貸借契約書・事務所内外の写真・看板の有無・光熱費・通信費の実績などで事業所の実体性が確認される。
不許可になる理由④:常勤職員の「実在性」が証明できない
改正後は常勤職員1名以上の雇用が必須となった。しかし雇用契約書があるだけでは不十分だ。
実際に雇用が履行されているかどうか——社会保険・労働保険の加入、給与の実際の支払い実績、勤怠記録——これらで「実在する雇用」であることを証明する必要がある。
形式的な契約だけで実際の勤務実態がない場合は、審査で問題になる可能性がある。
不許可になる理由⑤:事業計画の具体性・合理性が不足している
事業計画書は、2025年の改正から専門家(中小企業診断士・公認会計士・税理士)による確認が必須となった。
しかし専門家の確認があっても、計画の内容自体が不十分であれば問題になる。
不許可になりやすい事業計画の特徴として、実務上よく見られるのは以下のようなケースだ。
- 市場分析・ターゲット・競合の分析が曖昧
- 収支計画の根拠が不明確
- 実現可能性が低いと判断される計画
- 日本の制度的背景が反映されていない
「日本でカフェを開業して多くの人にサービスを提供する」という抽象的な記述では、計画の現実性を評価してもらうことは難しい。
不許可になる理由⑥:納税・社会保険の未履行
法人税・消費税・源泉徴収・社会保険料・労働保険料——これらの未納・滞納・重加算税は不許可の直接的なリスクになる。
「経営が苦しかったので払えなかった」という状況は、事業継続の実態に疑問を生じさせる。特に赤字決算であっても、実在する取引実績・KPIの改善計画・資金計画が定量的に示せれば更新の余地があるが、納税の未履行があると判断が著しく難しくなる。
不許可になる理由⑦:長期出国による活動実態の欠如
入管庁の改正資料には明確に記載がある。「在留期間中、正当な理由なく長期間の出国を行っていた場合は、本邦における活動実態がないものとして在留期間更新許可は認められない」。
具体的には、在留期間の過半(50%超)を出国していた場合、正当な理由がない限り更新審査で消極的に評価される。
ビジネスの都合で出国が多い場合は、出張報告書・商談記録などで「日本での経営活動の延長としての出国」であることを説明できる書類を準備しておくことが重要だ。
不許可になった場合の対応
不許可通知を受け取った場合、まず不許可の理由を入管窓口で直接確認する必要がある。電話・メール・文書では確認できず、窓口への来庁と事前予約が必要だ。
重要なのは、「同じ書類をそのまま出し直すこと」ではない。
不許可の理由を正確に把握した上で、その要因を解消した書類構成で再申請する必要がある。不許可後の再申請は審査がより厳しくなる傾向があるため、早めに専門家への相談が有効だ。
まとめ
2025年改正後の経営管理ビザの審査は、形式要件の充足から実態の立証へと重心が移っている。
不許可の主な理由は、資本金の出所の不明確さ、経営活動の実態の欠如、事業所の実体の欠如、常勤職員の実在性の不足、事業計画の具体性の不足、納税の未履行、長期出国による活動実態の欠如——これらが複合的に絡み合うことが多い。
日本で過ごした時間を、「更新不許可→帰国」という不本意な形で終わらせないために。審査で見られているポイントを把握した上で、早めに準備を整えることが重要だ。
阿部隆昭(あべ たかあき) 申請取次行政書士 / 東京都地域創業アドバイザー 行政書士阿部総合事務所 代表
経営管理ビザの更新・不許可後の再申請に関するご相談はお問い合わせください。
参照した一次ソース
- 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」QA(問19・問20)
- 出入国在留管理庁 改正省令(2025年10月16日施行)
この記事のシリーズ
- 経営管理ビザ申請96%減——「外国人経営者が激減した」は本当か?
- 経営管理ビザ改正の本質——96%減は「結果」に過ぎない
- 経営管理ビザの経過措置期間中に何をすべきか
- 経営管理ビザから他の在留資格への変更——注意してほしいこと
- 「ペーパーカンパニー」とは何か——経営管理ビザの文脈で正確に読む
- 「資本金3,000万円」の正確な意味
- 活動内容説明文書とは何か
- 経営管理ビザ更新許可の可能性を高めるためのアクションチェックリスト


