経営管理ビザ申請96%減——「外国人経営者が激減した」は本当か?

2026年5月、政府が経営管理ビザ厳格化の進捗を公表しました。「申請が96%減少」という数字が話題になっています。

この数字、あなたはどう読みましたか?


まず、この動画を見てください


対話で読み解く:96%減の正体


経営管理ビザの申請が96%減ったというニュース、見ました。外国人経営者がほとんどいなくなったということですか?

その読み方は正確ではありません。まず数字の中身を確認しましょう。

96%減の内訳はこうです。

  • 厳格化前(令和7年5月〜10月)の月平均申請数:約1,700件
  • 厳格化後(令和7年10月16日〜令和8年3月)の月平均申請数:約70件

この差が約96%減です。

つまり、経営管理ビザを持っている外国人が96%減ったということ?

そこが最も誤解されているポイントです。

今回減ったのは「在留資格認定証明書交付申請(COE申請)」の件数です。

COEとはCertificate of Eligibilityの略で、日本語では在留資格認定証明書と言います。これは海外にいる外国人が、これから日本に入国して経営活動をしたいという場合に必要な手続です。

つまり96%減は「これから新たに日本に入国しようとしている人の申請が激減した」という話であって、今すでに日本国内で経営管理ビザで活動している人がいなくなったという話では全くありません。

じゃあ今いる外国人経営者は影響を受けていないんですか?

既存の在留者の更新については、施行日から3年を経過する日までの更新は、改正後の基準に適合しない場合でも経営状況や新基準への適合見込みを踏まえて判断するとされています。

つまり96%減という数字と、既存在留者の更新審査は分けて読む必要があります。

なぜ厳格化されたんですか?

入管庁が明確に示しています。ペーパーカンパニーを設立して、在留資格の取得のみを目的とするケースが激増したからです。

旧基準では資本金500万円があれば要件を満たせました。この数字を利用して、実態のない会社を作り経営管理ビザを取得するという抜け道が使われていた。

今回の改正の本来の標的はここです。

でも実際にインド料理店や中華料理店が閉店していますよね。真面目に経営していた人たちも影響を受けているのでは?

そこが制度設計の問題です。

東京商工リサーチによると、2024年に国内で設立された企業のうち、資本金3,000万円以上はわずか1%。日本人経営者でも99%が届かない基準を外国人経営者に課しています。

私の事務所の支援先にも、ベトナム人の経営者がいます。真面目に事業を続けてきた方ですが、2026年7月の更新を前に帰国を選びました。「3,000万円は用意できない」と。

ペーパーカンパニーへの対策が、ルールを守ってきた経営者を直撃しています。

「日本人歓喜」という反応と「差別だ」という反応が両方あります。どちらが正しいんですか?

どちらも制度の構造を見ていません。

「日本人歓喜」という反応は、閉店しているのがルールを守ってきた経営者だと知らないまま喜んでいます。

「差別だ」と言う側は「資本金基準を下げろ」という要求ですが、それはペーパーカンパニーの抜け道を再び開けることになりかねない。

国の方針は明確です。「ルールを守る外国人を積極的に受け入れる一方で、安全・安心を脅かす外国人を排除する」——問題は方針ではなく、制度設計の精度です。

では何が必要ですか?

「基準を下げる・上げる」という二択ではなく、審査の軸を変えることです。

資本金という「入口の数字」ではなく、営業実績・納税実績・地域での雇用実績という「事業の実態」で判断する仕組みへの転換が必要です。

東京商工リサーチの担当者もこう言っています。「運営実績や事業実態を見て許可の判断をする配慮が必要だ」と。

また、もう一点付け加えると、今回の96%減という数字には交絡因子が含まれている可能性があります。厳格化が見えていた段階で旧基準での駆け込み申請が増えた可能性があり、改正前の月平均1,700件が通常より膨らんでいる可能性がある。96%減を「資本金要件だけの効果」として語るのは不正確です。


まとめ

96%減という数字の正体は「新規入国のためのCOE申請が激減した」ことであり、現在日本で活動している外国人経営者が96%いなくなったわけではありません。

改正の標的はペーパーカンパニー。しかし制度設計の粗さが、ルールを守ってきた小規模経営者を直撃しています。

外国人問題は、感情論ではなく、解き方があります。


阿部隆昭(あべ たかあき) 申請取次行政書士 / 東京都地域創業アドバイザー 行政書士阿部総合事務所 代表 abetakaaki.com

参照した一次ソース

  • 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」
  • 内閣官房「外国人政策に関する102の施策の進捗状況」(令和8年4月28日)
  • 東京商工リサーチ調査(299社回答、2026年3〜4月)
  • 朝日新聞2026年4月30日「外国人経営者、5%『廃業検討』」
  • 不法滞在者ゼロプラン(法務省・出入国在留管理庁)
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