「不法滞在者ゼロプラン」は、不法滞在者本人だけに関係する政策だと思っていないでしょうか。
2026年5月22日に政府が公表した強化プランでは、悪質な雇用主や不法就労をあっせんする者への取締り強化も明記されました。同じ日には、警察庁、法務省、出入国在留管理庁、厚生労働省が「不法就労外国人対策パッケージ」を策定しています。
この記事の結論
ゼロプランによって、外国人雇用の基本的な確認義務がすべて新しく始まったわけではありません。しかし、雇用主やあっせん者への取締りが強化される中、在留カードだけでなく、実際の仕事内容、資格外活動の範囲、雇用状況の届出、採用後の変更まで説明できる管理体制が、これまで以上に重要になっています。
「不法滞在者ゼロプラン」とは
出入国在留管理庁は、2025年5月23日に「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を公表しました。①入国審査、②在留審査・難民認定手続、③出国・送還という3つの段階で対策を進める計画です。
その後、2026年5月22日に「不法滞在者ゼロプランの強力な推進に向けた取組」が公表され、在留管理の適正化だけでなく、悪質な雇用主やブローカー等への対応も盛り込まれました。
2026年1月1日時点の不法残留者数は6万8,488人で、前年同期より6,375人、8.5%減少しています。政府は、不法滞在や不法就労への対応を継続的に強めています。
ここで大切なのは、適法に働く外国人まで一括して問題視しないことです。ルールを守って働く外国人と、適正に受け入れている企業を守るためにも、不法就労を生じさせない確認が必要です。
なぜ外国人を雇用する企業に関係するのか
不法就労は、在留期限を過ぎた人を雇う場合だけではありません。就労が認められていない人を働かせることや、在留資格で認められた範囲を超える仕事に従事させることも含まれます。
外国人が不法就労者であることを雇用主が知らなかった場合でも、在留カードを確認していないなどの過失があれば、不法就労助長罪の責任を免れない可能性があります。
2026年7月17日現在、不法就労助長罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」です。2027年4月1日からは「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」へ引き上げられる予定です。
雇用主が確認すべき5項目
1.在留カードの原本・真正性・失効情報
まず、在留カードの原本を提示してもらい、本人の顔、在留期限、就労制限の有無、資格外活動許可欄を確認します。画像やコピーだけで判断しないでください。
出入国在留管理庁は、ICチップを読み取ってカードの真正性を検証し、失効情報も確認できる公式の「在留カード等読取アプリケーション」を無料で提供しています。2026年6月には、第二世代在留カード・特定在留カード等に対応する新しいバージョンが公開されました。
アプリの利用自体が法律上の採用義務になったわけではありませんが、目視だけでは見抜きにくい偽変造・失効カードを見落とすリスクを減らせます。具体的な使い方は「在留カード確認が変わった|公式読取アプリで不法就労リスクを減らす方法」で解説しています。
2.在留資格と実際の仕事内容
在留カードが本物で、有効期限内であっても、それだけで予定する仕事に従事できるとは限りません。採用時の職種名や肩書ではなく、日々行う具体的な作業、業務割合、必要な専門性まで確認します。
「技術・人文知識・国際業務」など就労範囲が定められた在留資格では、学歴・職歴と仕事内容の関連性も問題になります。「特定活動」では、在留カードとあわせて指定書の確認が必要です。
詳しくは「在留資格と実際の仕事内容が合わない場合のリスク」をご覧ください。
3.資格外活動許可と就労時間
「留学」や「家族滞在」など、本来は就労を目的としない在留資格の人を雇用する場合は、資格外活動許可の有無と範囲を確認します。
包括的な資格外活動許可を受けた留学生等は、通常、原則として週28時間以内で働くことができます。ただし、複数の勤務先がある場合は、一社ごとに28時間ではなく、すべての勤務先の労働時間を合計します。本人の申告を受け、シフト変更や繁忙期の残業も含めて超過しない管理が必要です。
4.外国人雇用状況の届出
事業主は、外国人を雇い入れたときと離職したときに、氏名、在留資格、在留期間等を確認し、ハローワークへ届け出る義務があります。原則として、雇用保険の被保険者になる外国人は雇用保険の手続とあわせて、被保険者にならない外国人は所定の届出書で提出します。
この届出を怠ったり、虚偽の届出をしたりした場合は、30万円以下の罰金の対象となります。外国人本人や人材紹介会社に任せる手続ではなく、雇用主の義務として社内の担当者と期限を決めてください。
5.採用後の在留期限・異動・仕事内容の変更
外国人雇用の確認は、採用時に一度行えば終わりではありません。在留期限の更新、部署異動、店舗応援、職種変更、派遣先の変更、新規事業への配置などで、在留資格と実際の仕事が合わなくなることがあります。
在留期限を一覧で管理し、更新申請中か、新しいカードが交付されたかを確認します。仕事内容を変える前には、現在の在留資格で対応できるか、在留資格変更や就労資格証明書の取得を検討すべきかを確認してください。
「現在の義務」「今後の施行」「法改正前の提案」を分けて考える
| 区分 | 内容 | 雇用主がすべきこと |
|---|---|---|
| 現在 | 在留資格・就労制限の確認、外国人雇用状況の届出、不法就労助長罪。2026年5月から雇用主・あっせん者への取締りも強化 | 採用前と採用後の確認手順を運用する |
| 2027年4月1日施行予定 | 不法就労助長罪を5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金へ引上げ | 施行を待たず、現在の体制を点検する |
| 法改正前の提案 | 不法就労助長罪を各種事業法の許認可等の欠格事由に追加する検討 | 「すでに一律で許認可を失う制度」と誤解せず、今後の法改正を確認する |
強化プランには、不法就労助長罪を各種事業法の欠格事由に追加するため、必要な法整備を検討する方針も記載されています。ただし、これは2026年7月17日現在、法改正を要する提案段階です。詳しくは「不法滞在者ゼロプランと欠格事由――外国人を雇用する企業が知っておくべきこと」で整理しています。
採用前チェックを「担当者の経験」から「会社の手順」へ
- 在留カード原本と本人を照合する
- 公式読取アプリと失効情報照会を利用する
- 在留資格と具体的な仕事内容を照合する
- 資格外活動許可と全勤務先の就労時間を確認する
- 雇入れ・離職時の外国人雇用状況届出を行う
- 在留期限と更新状況を管理する
- 異動・職種変更の前に再確認する
採用時に整理しておきたい全体像は「外国人を採用すると決める前に確認する5項目」もあわせてご覧ください。
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