特定技能外国人を採用したい中小企業がまず押さえるべき要件と費用の現実

人手不足に悩む中小企業の間で、「特定技能」という言葉を聞く機会が増えています。しかし実際に採用しようとすると、制度の複雑さや費用感がわからずに足踏みしている経営者が少なくありません。

特定技能制度の基本と、中小企業が採用する際に実際に何が必要になるかを整理します。

この記事でわかること

  • 特定技能1号・2号の違い
  • 受け入れ企業が果たすべき義務(支援計画)
  • 採用にかかる費用の目安

特定技能制度とは

特定技能は、国内での人材確保が困難な特定の産業分野において、一定の専門性や技能を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。2019年4月に施行され、2024年の制度改正により対象分野が拡大されました。

2026年1月23日の閣議決定により、特定技能の対象となる特定産業分野は19分野に拡大されました(一次情報:出入国在留管理庁「特定技能の対象分野」)。

既存16分野(受入れ実施中)

  1. 介護
  2. ビルクリーニング
  3. 工業製品製造業(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業を統合)
  4. 建設
  5. 造船・舶用工業
  6. 自動車整備
  7. 航空
  8. 宿泊
  9. 農業
  10. 漁業
  11. 飲食料品製造業
  12. 外食業
  13. 自動車運送業
  14. 鉄道
  15. 林業
  16. 木材産業

新たに追加された3分野(2026年1月23日閣議決定・受入れ開始は省令等の公布・施行後、準備が整い次第)

  1. リネンサプライ
  2. 物流倉庫
  3. 資源循環

※新3分野については、省令等の公布・施行後、準備が整い次第、分野ごとに受入れが開始される予定です(時期は公式資料で「準備が整い次第」とされており、確定した時期は示されていません)。採用を検討する場合は出入国在留管理庁の最新情報を確認してください。

1号と2号の違い

区分特定技能1号特定技能2号
在留期間通算5年まで更新可能(上限なし)
家族帯同原則不可配偶者・子の帯同可
技能水準特定技能評価試験に合格 または技能実習2号修了より高度な試験・実務経験が必要
対象分野19分野(ただし新3分野は省令等の公布・施行後、準備が整い次第受入れ開始)介護を除く分野が基本(分野・業務区分ごとの運用要領確認が必要)

中小企業が最初に採用するのは1号が大半です。通算5年の在留制限があるため、長期的な人材育成という観点では2号への移行を視野に入れた計画が必要になります。

受け入れ企業の義務:支援計画

特定技能1号の外国人を受け入れる場合、企業は「1号特定技能外国人支援計画」を策定・実施しなければなりません。これが特定技能制度で最も負担が大きい部分です。

支援の内容は法務省の運用要領で定められており、主なものは以下のとおりです。

  • 事前ガイダンスの実施(入国前に、業務内容・報酬・生活情報などを説明)
  • 入国後の出迎えと住居確保の支援
  • 生活オリエンテーションの実施(公共機関の利用方法・災害時の対応等)
  • 日本語学習機会の提供
  • 相談・苦情への対応体制の整備
  • 日本人との交流促進
  • 非自発的離職時の転職支援
  • 定期的な面談と行政機関への報告

これらを自社で実施するのが難しい場合は、出入国在留管理庁に登録された「登録支援機関」に業務委託することができます。

採用にかかる費用の目安

特定技能の採用費用は、採用ルートや支援機関の利用有無によって大きく異なります。あくまで目安として参考にしてください。

費用の種類目安
人材紹介手数料(国内在住者)20〜50万円程度
人材紹介手数料(海外から呼び寄せる場合)50〜100万円程度
在留資格申請費用(行政書士費用)10〜20万円程度
登録支援機関への委託費用(月額)2〜5万円/人・月
住居確保関連費用(敷金・礼金等)実費

登録支援機関を利用する場合、採用後も毎月の委託費用が継続して発生します。人件費とは別にランニングコストがかかる点を採用計画に織り込んでください。

よくある質問

Q:技能実習生を特定技能に切り替えることはできますか?

A:できます。技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能1号の試験が免除されます。すでに技能実習で外国人を受け入れている企業にとっては、継続雇用の有力な選択肢です。手続きは在留資格の変更申請になります。

Q:特定技能外国人は転職できますか?

A:できます。同じ分野内であれば転職が認められています。これは技能実習制度との大きな違いの一つです。せっかく育てた人材が転職してしまうリスクがある一方、外国人側の権利として保障されています。

Q:特定技能の採用に地域の制限はありますか?

A:基本的に地域の制限はありません。ただし、農業・漁業分野については「農業特定技能協議会」等の特定の協議会への加入が義務付けられており、分野ごとに手続きが異なります。

阿部隆昭の視点

特定技能制度で経営者が事前に把握しておくべきことは、「採用して終わり」ではないという点です。支援計画の実施義務や、毎月の定期面談、行政機関への報告義務が継続して発生します。登録支援機関に委託すれば多くの実務を外注できますが、費用は継続してかかります。

特定技能を活用するかどうかの判断は、採用コストだけでなく、採用後の継続的なコストと管理負担も含めて検討してください。


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