「せっかく採用した外国人がすぐに辞めてしまう」。この悩みを抱える経営者は少なくありません。
採用コストをかけて雇い入れた外国人労働者が短期間で離職すると、次の採用にもコストがかかり、現場の負担も増えます。定着率を上げるためには、「なぜ辞めるのか」の理由を正しく把握することが先決です。

この記事でわかること
- 外国人労働者が離職する主な理由3つ
- 厚生労働省の外国人雇用管理指針が定める事業主の義務
- 中小企業でも実践できる定着支援策
外国人が離職する主な理由3つ
理由①:職場でのコミュニケーションの壁
日本語でのコミュニケーションに困難を感じ、業務内容や職場のルールが正確に伝わらない状態が続くと、ストレスが蓄積し離職につながります。雇用主側は「日本語が話せるから大丈夫」と思っていても、専門的な業務用語や日本特有の職場慣行は、日常会話ができても理解できないことがあります。
理由②:待遇や労働条件への不満
賃金・残業代の未払い、有給休暇が取れない、社会保険に加入させてもらえないといった問題は、外国人労働者が離職を決断する直接的な理由になります。厚生労働省の調査でも、労働条件に関するトラブルは外国人労働者に多く見られることが指摘されています。
理由③:キャリアの見通しが持てない
「この会社にいてもスキルアップできない」「将来のキャリアがイメージできない」と感じると、より良い条件の職場に転職します。特に技能・経験を積んだ外国人労働者ほど、成長の機会を重視する傾向があります。
厚生労働省の外国人雇用管理指針
厚生労働省は「外国人雇用管理指針」(2007年告示、その後改正)で、事業主が外国人労働者に対して取るべき措置を示しています。
指針が求める主な措置:
- 関係法令の遵守と適切な待遇の確保
- 魅力ある職場環境の整備
- 日常生活・社会生活上の支援
- 帰国・在留に関する支援
これらは罰則付きの個別義務とは区別されますが、事業主が講ずべき措置を示す厚生労働省告示として位置づけられており、定着率の向上という観点からも実践的な内容です。
中小企業にできる定着支援策3つ
対策①:業務マニュアルの多言語化
就業規則・業務手順書・緊急時の連絡先などを、外国人労働者の母語または英語に翻訳して提供します。
厚生労働省は「外国人向け模範雇用契約書」を複数言語で公開しています。これを利用することでコストをかけずに多言語対応を始められます。また、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」では、就業規則の多言語化にかかる費用の一部を助成する制度があります(詳しくは記事⑩をご覧ください)。
対策②:相談窓口の設置と定期面談の実施
外国人労働者が職場での困りごとを相談できる窓口を設けます。直属の上司への相談がしにくい場合もあるため、人事担当者や外部の相談窓口を周知しておくことが有効です。
定期面談(月1回程度)を実施し、業務上の問題・生活上の困りごと・キャリアの希望などを定期的に把握する仕組みを作ると、離職の予兆を早期に察知できます。
対策③:キャリアパスの明示
採用時に「この仕事を続けることでどんなスキルが身につくか」「どのようなキャリアがあるか」を具体的に伝えます。在留資格の更新・変更のサポートをすることも、長期就労を意識した外国人労働者にとって重要なシグナルになります。
よくある質問
Q:外国人労働者向けの日本語研修は助成金で対応できますか?
A:職務に関連する訓練として実施する場合、人材開発支援助成金の対象になり得る場合があります。一方、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、就業規則等の多言語化・相談体制の整備・一時帰国休暇制度・社内マニュアルの多言語化など就労環境整備を対象とする制度であり、日本語学習機会は現行ページの主な受給要件には含まれていません。申請前に、管轄のハローワークまたは都道府県労働局で対象経費を確認してください。
Q:外国人が職場のルールを守らない場合はどう対処すればよいですか?
A:まず、ルールが母語で正確に伝わっているかを確認することが先決です。日本の職場では暗黙のルールとされていることが、外国人には伝わっていないことがあります。書面で明確にした上で、それでも守られない場合は就業規則に基づいて対処します。
阿部隆昭の視点
外国人が「すぐ辞める」と感じている経営者の多くは、定着させるための対策より先に採用を繰り返しています。採用コストは定着支援コストより高くつくことが大半です。
外国人労働者が長く働きたいと思える職場環境を整えることは、育成就労制度への移行で転籍が自由化される今後の環境において、採用競争力に直結します。


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