2027年4月1日から、不法就労助長罪の法定刑が引き上げられます。外国人を雇用する企業にとって、これは「違反した企業への罰が重くなる」という話だけではありません。
政府の公式資料では「厳罰化」という表現が使われています。しかし、改正法全体では、育成就労制度の創設、外国人材の保護、特定技能制度の適正化なども同時に進められます。制度の方向性は、適法に働く外国人と、ルールを守って受け入れる企業を守るための「外国人雇用の適正化」と捉えるべきです。
この記事の結論
2027年4月1日以降、不法就労助長罪の上限は「3年以下・300万円以下」から「5年以下・500万円以下」へ引き上げられます。ただし、すべての違反に一律で5年や500万円が科されるという意味ではありません。企業がすべきことは、外国人採用を避けることではなく、在留資格と仕事内容を確認できる雇用管理へ切り替えることです。
2027年4月1日、不法就労助長罪の何が変わるのか
不法就労助長罪は、入管法第73条の2に定められている犯罪です。2026年7月18日現在の法定刑と、2027年4月1日以降の法定刑は次のとおりです。
| 時期 | 拘禁刑 | 罰金 |
|---|---|---|
| 2027年3月31日まで | 3年以下 | 300万円以下 |
| 2027年4月1日以降 | 5年以下 | 500万円以下 |
この改正は、技能実習制度を抜本的に見直して「育成就労制度」を創設する改正法の一部です。罰則の上限が引き上げられる一方で、新制度は就労を通じた人材育成と人材確保、育成就労外国人の保護、受入れ制度の適正化を目的としています。
したがって、「外国人を雇用すること自体への規制強化」ではありません。適正な受入れと、不法就労を利用する雇用主・あっせん者を区別する制度整備です。
不法就労助長罪の対象となる3つの行為
入管法第73条の2第1項は、次の行為を処罰対象としています。
- 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせること
- 外国人に不法就労活動をさせるため、自己の支配下に置くこと
- 業として、不法就労させる行為や支配下に置く行為をあっせんすること
直接雇用する企業だけの問題ではありません。人材紹介、派遣、請負などの関係者も、実際の関与の仕方によって対象となる可能性があります。「紹介会社に任せていた」「派遣元が確認すると思っていた」だけでは、実際に仕事を指示する企業側の確認が不要になるとは限りません。
不法就労は「在留期限切れ」だけではありません
不法就労というと、在留期限を過ぎた外国人を雇うケースが思い浮かびやすいでしょう。しかし、出入国在留管理庁は、不法就労を次の3つに整理しています。
| 類型 | 例 |
|---|---|
| 不法滞在者や退去強制が決まった人が働く | 在留期限を過ぎた人を働かせる |
| 就労が認められていない人が許可なく働く | 「短期滞在」の人や、資格外活動許可のない留学生を働かせる |
| 認められた範囲を超えて働く | 在留資格に合わない仕事をさせる、留学生等が許可時間を超えて働く |
有効な在留カードを持っている人でも、実際の仕事内容が在留資格の範囲外であれば、不法就労となる可能性があります。在留カードの有効性確認と、仕事内容の適合性確認は、別々に行う必要があります。
仕事内容との不一致については「在留資格と実際の仕事内容が合わない場合のリスク」で詳しく解説しています。
「知らなかった」だけでは責任を免れないことがある
出入国在留管理庁は、雇用しようとする外国人が不法就労者であることを知らなかった場合でも、在留カードを確認していないなどの過失があるときは、処罰を免れないと案内しています。
一方で、これは結果的に判断を誤った企業が、事情に関係なくすべて処罰されるという意味でもありません。重要なのは、企業が利用できる確認手段を使い、在留資格、就労制限、資格外活動許可、指定書、仕事内容を具体的に確認したかどうかです。
法人の代表者や従業員が、法人の業務に関して不法就労助長罪を犯した場合は、行為者だけでなく法人にも罰金刑を科す両罰規定があります。採用担当者個人の経験に依存せず、会社の確認手順として整備する必要があります。
なぜ「厳罰化」より「外国人雇用の適正化」と考えるのか
罰則の引上げだけを切り取ると、外国人雇用そのものが危険になったように見えるかもしれません。しかし、問題となるのは外国人を雇用することではなく、不法就労をさせること、支配下に置くこと、業としてあっせんすることです。
適法に働く外国人を守る
在留資格の範囲を超えた仕事や、許可時間を超えた就労を求められる立場の外国人は、雇用主やブローカーとの関係で弱い立場に置かれやすくなります。確認体制を整えることは、外国人本人を違反状態に追い込まないための保護でもあります。
適正に雇用する企業を守る
ルールを守って採用し、在留手続や労務管理にコストをかけている企業と、不法就労を利用する事業者が同じ市場で競争する状態は公平ではありません。悪質な受入れを排除することは、適正な企業の事業環境を守ることにつながります。
外国人であることを理由に採用を避けない
罰則強化への対応として、「外国人は採用しない」と一律に判断するのは、制度趣旨に沿った対応ではありません。国籍ではなく、予定する仕事内容と在留資格が適合するかを個別に確認することが、適正化の基本です。
罰則が強化されても変わらない3つのこと
- 在留カード読取アプリの利用が一律の法的義務になるわけではありません。
ただし、偽変造・失効カードを見落とすリスクを減らす有効な確認手段です。 - 有効な在留カードがあれば、どの仕事でも任せられるわけではありません。
在留資格と実際の仕事内容の照合が必要です。 - 一度確認すれば、退職まで確認不要になるわけではありません。
在留期限の更新、異動、職種変更、派遣先変更などの際に再確認が必要です。
在留カードの確認方法は「在留カード確認が変わった|公式読取アプリで不法就労リスクを減らす方法」をご覧ください。
2027年4月までに企業が整える6項目
- 在留カード原本と本人を照合する
コピーや画像だけで採用判断をしない。 - 公式読取アプリと失効情報照会を利用する
偽変造・失効カードの見落としを減らす。 - 在留資格と具体的な仕事内容を照合する
職種名ではなく、日々の作業と業務割合を確認する。 - 資格外活動許可と就労時間を管理する
複数の勤務先がある場合は合計時間を確認する。 - 異動・派遣先変更・職種変更の前に再確認する
採用後の変更で在留資格との不一致を生じさせない。 - 確認日・確認者・確認資料を記録する
担当者が交代しても説明できる社内記録を残す。
採用前から採用後までの全体像は、柱記事「不法滞在者ゼロプランで外国人雇用はどう変わる?雇用主が確認すべき5項目」で整理しています。
罰則の施行を待たず、現在の雇用管理を点検してください
法定刑が変わるのは2027年4月1日ですが、不法就労助長罪も、在留資格と仕事内容を確認する必要性も、すでに存在しています。
施行直前に書類だけを整えるのではなく、実際の現場で外国人従業員がどの仕事を担当しているかまで確認してください。外国人雇用の適正化は、在留カードのコピーを保存することではなく、雇用の実態を説明できる状態をつくることです。
外国人雇用の確認体制を、2027年4月までに点検しませんか
在留カード、在留資格、仕事内容、資格外活動、派遣・配置転換、採用後の期限管理まで、企業の実情に合わせて確認項目を整理します。
