「人手不足だから、外国人を採用しよう」と決めても、すぐに求人や雇用契約へ進むのは危険です。外国人雇用では、本人の能力だけでなく、実際に担当してもらう仕事内容と在留資格が合っているか、入社までに必要な申請があるか、採用後の管理を誰が担当するかまで確認する必要があります。
出入国在留管理庁が2026年7月に公表した最新Q&Aでも、外国人を雇用する際は、在留資格・在留期限・就労制限を確認し、職務内容が在留資格に該当するかを確認するよう示されています。ここでは、中小企業が採用を決定する前に確認しておきたい5項目を、実務の順番に沿って整理します。
採用前の5項目
1. 実際の仕事内容
2. 在留資格と就労制限
3. 学歴・職歴と必要な申請
4. 雇用条件と受入れ体制
5. 採用後の届出・在留管理
1.求人票ではなく「実際の仕事内容」を整理する
最初に確認すべきなのは、候補者の国籍ではなく、入社後に担当してもらう具体的な業務です。「営業」「通訳」「エンジニア」といった職種名だけでは、在留資格との適合性を判断できません。
- 毎日行う中心業務は何か
- 付随業務として何を行うか
- 各業務のおおよその割合
- 勤務場所と配属先
- 入社後に業務内容が変わる予定があるか
例えば、求人票には「海外顧客対応・通訳」と書いてあっても、実際には店舗での接客、配膳、清掃が業務の大半を占める場合、名称だけで「技術・人文知識・国際業務」に該当すると判断することはできません。
なお、専門業務以外の作業が少しでも含まれれば直ちに不許可になる、という意味ではありません。入管庁は、活動全体を見て判断するとしており、日本人新入社員と同じく、専門業務に必要な入社時研修として行う場合などは認められることがあります。重要なのは、実際の業務内容と割合を説明できる状態にすることです。
2.在留カードと就労制限を確認する
日本国内にいる外国人を採用する場合は、在留カードの原本などで、少なくとも次の点を確認します。
- 在留資格
- 在留期間と満了日
- 在留カード表面の「就労制限の有無」
- 在留カード裏面の「資格外活動許可欄」
- 「特定活動」の場合はパスポートに添付された指定書
- カード番号が失効していないか、券面に不自然な点がないか
「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」は、入管法上、就労する職種に制限がありません。一方、「技術・人文知識・国際業務」「技能」「特定技能」などの就労資格は、許可された活動の範囲内で働くことが前提です。
また、「留学」「家族滞在」は原則として就労を目的とする在留資格ではありません。資格外活動許可がある場合でも、通常は原則週28時間以内などの制限があります。カードを持っていることと、予定している仕事に就けることは同じではありません。
3.学歴・職歴と、入社前に必要な申請を確認する
仕事内容が就労資格の対象になりそうでも、本人の学歴・専攻・職歴などの要件を満たさなければ、在留資格の許可は受けられません。
特に「技術・人文知識・国際業務」では、担当業務と大学・専門学校での専攻との関連性、または一定の実務経験が審査されます。海外の大学を卒業している場合は卒業証明書や成績証明書、職歴で要件を立証する場合は在職証明書などを準備できるかも確認します。
| 候補者の状況 | 主に確認する手続 |
|---|---|
| 海外から新たに呼び寄せる | 在留資格認定証明書交付申請 |
| 留学生など、現在の資格では予定業務に就けない | 在留資格変更許可申請 |
| すでに就労資格を持ち、転職する | 新しい仕事内容が現在の資格に該当するか確認。必要に応じて就労資格証明書を検討 |
| 在留期限が近い | 在留期間更新許可申請の時期も確認 |
「前の会社でも同じ在留資格だったから大丈夫」とは限りません。在留資格は勤務先の名称だけではなく、新しい会社で実際に行う活動との関係で確認する必要があります。
4.雇用条件と受入れ体制を確認する
在留資格の確認と並行して、雇用契約の内容を具体化します。業務内容、勤務場所、契約期間、労働時間、賃金、控除、社会保険などを、本人が理解できる方法で説明できるようにします。
例えば「技術・人文知識・国際業務」では、日本人が同じ業務に従事する場合と同等額以上の報酬であることが基準の一つです。外国人だからという理由で不合理に低い条件を設定することはできません。
- 雇用契約書と求人内容に食い違いがないか
- 本人に説明した手取り額と実際の控除に差がないか
- 配属先の上司が在留資格上の業務範囲を理解しているか
- 在留手続や更新時期を管理する担当者が決まっているか
- 特定技能の場合、支援計画を自社で実施するか登録支援機関へ委託するか
採用担当者だけが制度を理解していても、配属後に現場判断で別の仕事を任せてしまえば、仕事内容との不一致が生じます。採用前に現場責任者まで共有しておくことが重要です。
5.採用後の届出・在留管理まで担当を決める
外国人雇用は、在留資格が許可され、入社したら終わりではありません。事業主には、外国人の雇入れ・離職時に外国人雇用状況をハローワークへ届け出る義務があります。雇用保険の被保険者になるかどうかによって、使用する様式と期限が異なります。
- 外国人雇用状況の届出
- 本人による所属機関・契約機関に関する届出の案内
- 在留期限の管理と更新準備
- 異動・転勤・職務変更時の再確認
- 特定技能など在留資格ごとの支援・届出
詳しい届出期限は「外国人雇用状況届出を怠るとどうなるか」でも解説しています。
採用決定前チェックリスト
- 中心業務と付随業務を、割合まで書き出した
- 在留カード原本・指定書・資格外活動許可を確認した
- 予定業務と在留資格の適合性を確認した
- 学歴・専攻・職歴を裏付ける書類を確認した
- 入社前に必要な在留申請とスケジュールを確認した
- 雇用条件を本人が理解できる方法で説明した
- 配属先と在留資格上の業務範囲を共有した
- 採用後の届出・在留期限管理の担当者を決めた
よくある質問
在留資格の変更許可前に内定を出してもよいですか?
内定や雇用契約を申請資料として用いることはありますが、現在の在留資格で認められない業務を、変更許可前から開始させることはできません。就労開始日を許可取得後とするなど、契約と実際の勤務開始を整理してください。
転職者なら、現在の在留資格をそのまま使えますか?
在留資格の名称が同じでも、新しい会社の仕事内容が許可された活動に該当するかは別途確認が必要です。判断が難しい場合は、就労資格証明書の利用も検討します。
永住者なら何も確認しなくてよいですか?
職種上の制限はありませんが、在留カード、在留期間、本人確認、外国人雇用状況の届出など、必要な確認まで不要になるわけではありません。
採用を決める前に、仕事内容と在留資格を整理します
「この人を採用したいが、どの在留資格になるのか」「予定している仕事を任せてよいのか」という段階からご相談いただけます。採用後に仕事内容を変更するより、採用前に整理する方が、企業と候補者双方の負担を小さくできます。

