特定技能の登録支援機関に任せるだけでは足りない3つの理由——育成就労移行で問われる「自社の受入れ体制」

特定技能外国人を雇用している企業の多くが、登録支援機関に在留手続きと支援業務を委託しています。

法的には問題ありません。むしろ特定技能制度において、登録支援機関の活用は制度設計上の前提の一つです。

しかし、現場で繰り返し見えてくる事実があります。

「登録支援機関に任せているから大丈夫」と思っている企業ほど、定着・コンプライアンス・次の在留資格への移行で課題が顕在化しやすい。

なぜそうなるのか。登録支援機関の「法定業務の範囲」を正確に理解すれば、答えは明確です。

登録支援機関の法定業務とは何か

特定技能制度において、登録支援機関が担う法定の支援業務は、出入国在留管理庁が定めた「1号特定技能外国人支援計画」に基づきます。

具体的には以下の10項目です。

  1. 事前ガイダンス(在留資格・生活・労働条件の説明)
  2. 出入国時の送迎
  3. 住居確保・生活に必要な情報提供
  4. 生活オリエンテーション
  5. 公的手続等への同行
  6. 日本語学習の機会提供
  7. 相談・苦情への対応
  8. 日本人との交流促進
  9. 非自発的離職時の転職支援
  10. 定期的な面談・行政への通報

これらはすべて「在留中の生活支援・情報提供」が中心です。

重要なのは、この10項目の中に含まれていないものです。

登録支援機関の「法定業務外」にあるもの

登録支援機関が法律上担う義務がない領域を整理します。

① キャリア設計・昇格ルートの整備

特定技能外国人が「この会社でどう成長できるか」を示すキャリアパスの設計は、法定支援業務に含まれていません。将来が見えない外国人スタッフは転職活動を開始します。これが特定技能の離職率が高い構造的な原因の一つです。

② 就業規則・雇用契約書の外国人対応

日本語で書かれた就業規則を渡して終わり、というケースが申請取次の現場では今も珍しくありません。母国語での説明・理解確認・署名取得は、法定支援業務には明示されていないため、登録支援機関がカバーしないケースがあります。

③ 特定技能2号・永住申請への移行支援

特定技能1号の在留期間は最長5年です。2号への移行や、要件を満たした場合の永住申請は、外国人本人にとって最大の関心事の一つです。しかし登録支援機関の業務はあくまで「1号特定技能外国人の支援計画の実施」であり、次のステップへの移行支援は業務範囲外です。

④ 育成就労制度への対応

2024年に成立した育成就労法(技能実習法の後継)への対応は、登録支援機関の法定業務には含まれていません。育成就労から特定技能への移行を見据えた受入れ体制の整備は、雇用企業が自ら設計する必要があります。

なぜ今、この「空白」が問題になるのか

2024年の育成就労法成立により、技能実習制度は段階的に廃止・移行されます。

育成就労制度の目的は「特定技能への移行」です。つまり、技能実習から育成就労、育成就労から特定技能1号、そして特定技能2号・永住——この一連のキャリアパスを見据えた受入れ体制を、今から整備しておかなければなりません。

登録支援機関は「今の支援計画を実施する機関」であり、「次のキャリアを設計する専門家」ではありません。

この役割分担を理解せずに「登録支援機関に任せているから大丈夫」のまま移行期を迎えると、外国人スタッフの離職・転職、次の在留資格申請の遅延、受入れ企業としての評価低下につながります。

3つの理由:なぜ登録支援機関だけでは足りないのか

整理すると、以下の3点に集約されます。

理由1:定着支援は法定業務に含まれていない

キャリアパスの提示・昇格ルートの整備・就業規則の多言語対応——離職を防ぐための設計は、登録支援機関の法的義務の外にあります。

理由2:次の在留資格への移行は「別の専門家」が必要

特定技能2号・永住申請・家族帯同の在留資格——これらは申請取次行政書士の専門領域です。登録支援機関が担う法定支援業務とは性質が異なります。

理由3:育成就労移行で「受入れ体制」が問われる

育成就労制度では、企業が外国人を「育てる」主体として評価されます。登録支援機関に委託するだけの受入れ体制では、制度の趣旨に応えられない局面が来ます。

登録支援機関と行政書士の役割分担

登録支援機関と行政書士は競合ではありません。役割が異なります。

領域登録支援機関申請取次行政書士
支援計画の実施◎ 法定義務
在留資格の申請・更新△ 一部対応◎ 専門領域
次の在留資格への移行× 法定外◎ 専門領域
キャリア設計・定着支援× 法定外◎ 対応可能
就業規則・雇用契約の整備× 法定外◎ 対応可能
育成就労移行対応× 法定外◎ 対応可能

登録支援機関が担う法定支援業務をきちんと実施しながら、その外側にある「定着・キャリア・次の在留資格」を行政書士がサポートする——この連携が、特定技能外国人の長期定着につながります。

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行政書士 阿部隆昭 申請取次行政書士 / 行政書士阿部総合事務所代表 東京都北区 | abetakaaki.com | abeoffice.net

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