技能実習廃止・育成就労制度スタート――何が変わり、今の採用計画にどう影響するか

「技能実習が廃止されると聞いたが、うちへの影響はどうなるのか」。技能実習生を受け入れている、または受け入れを検討している企業の経営者から、この質問をよく受けます。

制度の変更内容と、今の採用計画に与える影響を整理します。

この記事でわかること

  • 技能実習制度が廃止される経緯と理由
  • 育成就労制度の主な変更点
  • 現在技能実習生を受け入れている企業が今すべきこと

なぜ技能実習制度が廃止されるのか

技能実習制度は、開発途上国への「技能移転」を目的として創設された制度ですが、長年にわたり「安価な労働力の確保手段として使われている」という批判が続いてきました。

実態として、技能実習生が不当な扱いを受けるケース、賃金の未払い、失踪者の急増など、人権上の問題が国内外から指摘されてきました。国際的な批判も高まり、2022年に設置された有識者会議の議論を経て、技能実習制度の廃止と育成就労制度への移行が決定されました。

育成就労制度の主な変更点

育成就労制度は「人材育成」と「労働力確保」を正面から目的として掲げており、技能実習制度との違いは以下のとおりです。

比較項目技能実習制度育成就労制度
制度の目的技能移転(開発途上国支援)人材育成と労働力確保
在留期間最長5年(実習1号〜3号)原則3年
転職(転籍)原則不可(同一企業・職種内のみ)一定期間後に同一分野内での転籍を認める
受け入れ機関監理団体を通じた受け入れ監理支援機関(名称変更)を通じた受け入れ
外国人保護の強化相談・支援が不十分と指摘相談支援体制の強化が義務付けられる

最大の変更点は転籍(転職)の自由化です。技能実習では原則として職場を変えることができませんでしたが、育成就労では一定の要件(同一分野・一定期間の就労)を満たせば転籍が認められます。

移行時期のスケジュール

育成就労制度は、一部の規定を除き、令和9年4月1日(2027年4月1日)から運用開始予定です(出入国在留管理庁公式情報)。最新情報は法務省・厚生労働省の公式サイトで確認してください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/gaikokujin_hogo/ikuseishuro/index.html

なお、育成就労産業分野は、特定技能の特定産業分野から自動車運送業・航空を除いた分野として整理されています。

現在技能実習で受け入れている外国人については、経過措置の対象となる場合があります。今後の新規受入れを検討する企業は、令和9年4月1日以降の育成就労制度を前提に、監理団体・監理支援機関との確認を進める必要があります。

現在技能実習生を受け入れている企業が今すべきこと

①既存の技能実習生の在留状況の確認

現在受け入れている技能実習生の在留期間・実習計画の段階を確認してください。移行期においても、現在の実習は継続されます。

②育成就労制度への対応を監理団体・支援機関と相談

制度変更の詳細は現在も策定中の部分があります。現在の監理団体に最新情報を確認し、受け入れ方針を見直す準備をしておくことが重要です。

③転籍リスクへの対応

転籍が認められるようになることで、採用・育成した外国人が転職するリスクが生じます。外国人労働者が長く働きたいと思える職場環境の整備が、これまで以上に重要になります。

よくある質問

Q:技能実習から特定技能への移行は引き続き可能ですか?

A:技能実習2号を良好に修了した外国人は、引き続き特定技能1号への移行が可能です。育成就労制度への移行後も、育成就労を修了した外国人が特定技能へ移行する仕組みが設けられる予定です。

Q:育成就労制度でも監理支援機関は必要ですか?

A:育成就労制度においても、「監理支援機関」(名称変更)を通じた受け入れが基本となる見込みです。現在の監理団体が監理支援機関として登録し直す形になります。

阿部隆昭の視点

技能実習廃止と育成就労制度への移行は、「安価な労働力を確保する手段」としての外国人採用のあり方を根本から問い直す制度変更です。転籍の自由化は、外国人労働者の権利保護という観点では前進ですが、企業側には「選ばれる職場」であることが求められます。

待遇の改善、日本語教育の提供、キャリアパスの明示といった取り組みが、今後の外国人採用を左右する要因になっていきます。


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