経営管理ビザの経過措置期間中に何をすべきか——2028年10月までに準備すること

2025年10月16日の改正施行から、経営管理ビザを保有している人には3年間の経過措置が設けられた。

「3年あるから大丈夫」と思っているなら、それは危険な読み方だ。

この記事では、経過措置期間中に何が起きるのか、そして何を準備すべきかを実務の視点から整理する。


経過措置の正確な意味

施行日(2025年10月16日)から2028年10月16日までの3年間、更新時に新基準を完全に満たしていない場合でも、経営状況や新基準を満たす見込みを踏まえて総合的に判断するとされている。

ここで重要なのは「新基準を満たす見込みを踏まえて」という部分だ。

更新のたびに「いつまでに、どのように新基準を満たすのか」という具体的な計画を示すことが求められる。計画を示せなければ、経過措置の恩恵を受けられない可能性がある。

経過措置は「3年間は何もしなくていい」ではなく、「3年以内に新基準を満たす計画を持っていることを示せ」という設計だ。


更新のたびに問われること

経過措置期間中の更新審査では、以下の点が確認される。

事業の実態審査 売上・契約・入出金の実績、活動内容説明文書の提出が原則必須となっている。「会社はあるが実態がない」状態は、経過措置があっても更新が認められない可能性が高い。

納税・社会保険の履行 公租公課の履行状況が厳格に確認される。未納・滞納がある場合は更新に影響する。

新基準を満たす見込み 資本金・常勤職員・日本語能力・学歴職歴について、いつまでにどう対応するかの説明が求められる。

つまり経過措置期間中であっても、審査の実質的な厳格度は改正後基準に近い水準で運用されている。


資本金3,000万円をどう考えるか

最大のハードルは資本金(投下総額)3,000万円だ。

まず「資本金として3,000万円を口座に入れる」という理解は正確ではない。「投下総額」という概念が導入されており、事務所の賃料・設備・人件費等を含めた実際の事業投資の累計額で判断される。

つまり事業を継続しながら投資を積み上げてきた実績があれば、それが投下総額として評価される可能性がある。

ただし現実的に言えば、多くの小規模外国人経営者にとって3,000万円という水準は高いハードルだ。3年間でこの水準に達する具体的な目処が立たない場合、早めに方向性を決断することが重要になる。

選択肢は大きく3つある。

①増資・事業拡大で新基準を満たす 事業を拡大して投下総額を積み上げ、常勤職員を雇用し、新基準を満たす。これが最も望ましいが、3年という期間と事業の現状によって可能かどうかが変わる。

②在留資格を変更する 経営管理ビザ以外の在留資格(技術・人文知識・国際業務等)に変更して日本に在留を続ける。自ら経営者として活動することはできなくなるが、日本での生活を継続できる。

③事業を整理して帰国・転出する 増資の目処も立たず、他の在留資格への変更も難しい場合、早めに事業を整理して帰国・第三国への転出を選択する。経過措置ギリギリまで引き延ばすよりも、計画的に整理する方が本人にとって損失が少ない場合がある。


今すぐやるべきこと

経過措置期間中に取るべきアクションを優先度順に整理する。

①現状の棚卸しをする 自社の投下総額・常勤職員の状況・日本語能力・学歴職歴を整理する。新基準との乖離がどの程度あるかを把握することが出発点だ。

②事業の実態を整備する 売上・契約・入出金の記録を整理し、活動内容説明文書として説明できる状態にする。更新時に「事業実態がない」と判断されることが最大のリスクだ。

③納税・社会保険を正常化する 未納・滞納がある場合は早急に解消する。これは経過措置の有無にかかわらず、更新審査の基本条件だ。

④3年間の計画を立てる 2028年10月までに新基準をどう満たすか、または満たせない場合にどう方向転換するかの計画を立てる。計画があることと、計画を示せることは別だ。更新時に説明できる状態にしておく。

⑤専門家に相談する 自分の状況が経過措置の対象としてどう評価されるかは、個別の事情によって異なる。早めに申請取次行政書士に相談することで、更新不許可というリスクを回避できる。


経過措置を「猶予」と読むな

私の支援先のケースを紹介する。

在日10年以上のベトナム人経営者で、事業を継続してきた方だ。経過措置期間内の更新にもかかわらず、「実質的に改正後の要件を満たさないと更新できないのではないか」という懸念が広がり、更新せずに帰国を選んだ。

資本金を500万円から3,000万円に増資できる具体的な目処が立たなかった。経過措置が「準備期間」ではなく「廃業までのカウントダウン」として機能した結果だ。

この判断が正しかったかどうかは、個別の事情によって異なる。しかし「3年あるから大丈夫」という思い込みで先送りした結果、選択肢が狭まるケースは今後増えると見ている。

経過措置期間中に早めに現状を把握し、方向性を決断することが、本人にとって最も損失が少ない行動だ。


まとめ

経過措置は「猶予」ではなく「準備期間」だ。3年間で新基準を満たす計画を持ち、それを更新のたびに示すことが求められる。

計画が立てられないなら、早めに方向転換を検討する方が合理的だ。経過措置ギリギリまで引き延ばすことが、必ずしも本人の利益になるわけではない。

外国人問題は、感情論ではなく、解き方がある。


阿部隆昭(あべ たかあき) 申請取次行政書士 / 東京都地域創業アドバイザー 行政書士阿部総合事務所 代表

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参照した一次ソース

  • 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(2025年10月16日施行)
  • 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」
  • 内閣官房「外国人政策に関する102の施策の進捗状況」(令和8年4月28日)

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