在留カードだけでは就労可否を判断できない――「特定活動」は指定書まで確認する

外国人の採用選考で在留カードを確認し、「有効期限内だから働ける」「特定活動だから就労できる」と判断していないでしょうか。

在留カードは重要な確認資料ですが、カードに記載された在留資格名だけで、自社の仕事に従事できるかまで判断できるとは限りません。特に「特定活動」は、法務大臣が個々の外国人について活動内容を指定する在留資格です。同じ「特定活動」でも、就労できる人、就労できない人、指定された範囲に限って就労できる人がいます。

企業が確認すべきなのは、カードを持っているかではなく、その人が、現在、自社で予定する業務に適法に従事できるかです。

本記事では、採用担当者が資料を確認する順序を、2026年6月から交付が始まった新様式の在留カードも含めて整理します。

最初に確認する5点

採用前には、少なくとも次の順序で確認します。

  1. 在留カードの原本と本人が一致しているか
  2. 在留資格、在留期間満了日、就労制限の記載はどうなっているか
  3. 裏面に資格外活動許可や申請中の記載があるか
  4. 「特定活動」の場合は、指定書に何が記載されているか
  5. カードが失効していないか、偽変造の疑いがないか

このうち一つだけを確認しても足りません。

1.在留カードはコピーより原本を確認する

画像やコピーだけでは、カードを所持している本人との同一性、カード表裏の状態、偽変造防止要素を十分に確認できません。採用手続の適切な段階で、本人から在留カードの原本を提示してもらい、顔写真、氏名、生年月日などを確認します。

確認の目的は、外国人本人の私生活を調べることではありません。予定する雇用が適法に行えるかを確認することです。取得する写しや記録も、その目的に必要な範囲に限定し、社内の閲覧者や保管期間を決めておく必要があります。

2.表面では在留資格名だけを見ない

在留カード表面では、主に次の項目を確認します。

  • 在留資格
  • 在留期間満了日
  • 就労制限の有無
  • 在留カード番号とカード自体の有効期限

就労制限欄が「就労制限なし」であれば、入管法上は活動内容による就労制限がありません。一方、「在留資格に基づく就労活動のみ可」であれば、その在留資格の範囲に該当する業務に限られます。

そして「指定書により指定された就労活動のみ可」と記載されている場合は、在留資格が「特定活動」であり、指定書を見なければ具体的な範囲を確認できません。

2026年6月14日以降の新様式にも注意

2026年6月14日から、新様式の在留カードと、マイナンバーカード機能を備えた「特定在留カード」の交付が始まりました。それ以前に交付された旧様式のカードも、有効期間内であれば引き続き有効です。

新様式では券面記載事項が見直されました。出入国在留管理庁の「在留カード等読取アプリケーション」は、2026年8月19日公開版から、新様式カードのICチップに記録された「在留期間」「許可の種類」「許可年月日」も表示できるよう改修されています。

企業の確認手順も、券面を見るだけで終わらせず、必要に応じて最新の公式読取アプリを使用する形へ更新する必要があります。

3.裏面の資格外活動許可を確認する

表面に「就労不可」と記載されていても、裏面の資格外活動許可欄に許可が記載されていることがあります。

代表的な記載は、次のようなものです。

  • 原則として週28時間以内で、風俗営業等への従事を除く包括的な許可
  • 資格外活動許可書に記載された範囲に限定された個別的な許可

後者の場合は、在留カードだけでなく資格外活動許可書まで確認します。

ただし、資格外活動許可があるからといって、正社員として予定するフルタイム業務を当然に行えるわけではありません。許可された時間、活動内容、勤務先などの制限と、自社の労働条件を照合する必要があります。

4.「特定活動」は必ず指定書まで確認する

「特定活動」は、ひとつの職種や制度を表す名称ではありません。ワーキングホリデー、継続就職活動、内定後の待機、特定の就労活動など、さまざまな活動が同じ在留資格名の下で指定されます。

そのため、採用担当者が「以前、特定活動の人を雇用できた」と記憶していても、別の候補者にも同じ取扱いができるとは限りません。

指定書では、少なくとも次の点を確認します。

  • 報酬を受ける活動が認められているか
  • 認められる活動の内容
  • 勤務先や契約先が限定されているか
  • 活動時間などに制限があるか
  • 自社で予定する中心業務が、その指定内容に含まれるか

指定書は旅券に添付されている場合と、別紙として交付されている場合があります。「指定書を紛失した」「手元にない」という場合に、本人の説明だけで勤務を始めてもらうのは危険です。必要な確認方法を地方出入国在留管理官署へ照会するなど、原資料を確認できる状態にします。

5.「申請中」は新しい仕事を始めてよいという意味ではない

在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請を行うと、在留カード裏面に申請中である旨が記載されることがあります。

しかし、申請中であることと、申請先の在留資格での活動をすでに行えることは別です。

在留資格変更が許可されるまでは、原則として現在の在留資格と許可内容の範囲で活動します。新しい会社の業務が現在の許可範囲に含まれないのであれば、「変更申請を出したから」「受付票があるから」という理由で勤務を開始することはできません。

在留期限までに申請を行った場合の特例期間も、申請した新しい活動を先に始める制度ではありません。企業は、申請の種類、現在の在留資格、許可済みの活動、結果が出るまでの就労可否を分けて確認します。

6.失効情報照会だけで真偽確認を終えない

出入国在留管理庁は、在留カード番号と有効期間満了日を入力し、カードが失効していないか確認できる「在留カード等番号失効情報照会」を提供しています。

ただし、照会結果が「失効していない」であっても、そのカード自体が真正であることを完全に保証するものではありません。実在するカード番号を悪用した偽造カードもあるためです。

企業では、次を組み合わせて確認します。

  • 本人とカード原本の照合
  • 券面の偽変造防止要素の確認
  • 公式の在留カード等読取アプリによるICチップ情報の確認
  • 在留カード等番号失効情報照会
  • 必要に応じた旅券、指定書、資格外活動許可書の確認

採用担当者用の確認記録を残す

確認した結果は、社内で再現できる形にしておきます。例えば次の項目です。

  • 原本確認日と確認者
  • 在留資格と在留期間満了日
  • 就労制限欄の記載
  • 資格外活動許可の有無と範囲
  • 指定書の有無と、自社業務との対応
  • 失効情報照会・ICチップ確認の実施日
  • 在留資格変更等が必要な場合の就労開始条件

個人情報を必要以上に複写することが目的ではありません。誰が、何を根拠に、就労可能と判断したかを説明できる状態を作ることが目的です。

雇用後も確認は一度で終わらない

採用時に問題がなくても、在留期間の更新、在留資格の変更、仕事内容や配属先の変更によって状況が変わります。

在留期限の管理だけでなく、雇用契約や担当業務を変更するときにも、現在の在留資格との適合性を確認します。判断が難しい場合には、就労資格証明書の交付申請により、予定する業務が現在の在留資格で行える活動に該当するか確認する方法もあります。

阿部隆昭の視点――カード確認を「身分証チェック」で終わらせない

在留カード確認が形式化すると、表面をコピーして人事ファイルへ入れるだけになりがちです。しかし、企業が知りたいのはカードの有無ではなく、その人が自社の仕事をできるかです。

特に「特定活動」は、在留資格名だけでは結論が出ません。指定書、資格外活動許可、申請中の手続、実際の仕事内容までつなげて初めて判断できます。

採用前にこの確認を行えば、内定後に入社を延期したり、本人と会社の認識が食い違ったりするリスクを減らせます。分からない資料が出てきた段階で専門家へ相談することが、企業と外国人本人の双方を守ります。

外国人採用前の在留資格確認に対応しています

行政書士阿部総合事務所では、在留カード、指定書、資格外活動許可書と、企業が予定する業務を照合し、採用判断に必要な在留資格上の論点を整理します。

  • 特定活動の指定書をどう読めばよいか分からない
  • 現在の在留資格で自社の仕事ができるか確認したい
  • 在留資格変更が必要か知りたい
  • 就労資格証明書の利用を検討したい

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シリーズの親記事:内定後に「今は働けない」と分かった――外国人採用で確認が内定後になると何が起きるか

参考にした公的資料

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