「通訳として採用したが、実際には店舗業務が中心になっている」「エンジニアとして入社したが、人手不足のため製造ラインに配置している」。こうした在留資格と実際の仕事内容のずれは、外国人本人だけでなく、受け入れ企業にも大きなリスクを生じさせます。
外国人が日本で働けるかどうかは、「就労できる在留資格を持っているか」だけでは決まりません。その在留資格で、実際に担当する業務を行えるかまで確認する必要があります。
「就労できる」と「この仕事ができる」は別の問題
在留資格には、職種の制限がないものと、活動内容が限定されるものがあります。
| 主な在留資格 | 仕事内容の考え方 |
|---|---|
| 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 | 入管法上、就労する職種に制限なし |
| 技術・人文知識・国際業務、技能、介護など | 在留資格ごとに認められた活動の範囲内で就労 |
| 特定技能 | 許可された特定産業分野・業務区分の範囲内で就労 |
| 特定活動 | パスポートに添付された指定書の内容を個別に確認 |
| 留学、家族滞在 | 原則就労不可。資格外活動許可がある場合も時間・場所等に制限 |
特に誤解が多いのが「技術・人文知識・国際業務」です。この在留資格は、専門的な技術・知識、または外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務を対象としています。「就労ビザを持っているから、社内のどの仕事でも任せられる」というものではありません。
対象業務の詳しい考え方は「技術・人文知識・国際業務ビザでできる仕事・できない仕事」もあわせてご覧ください。
仕事内容が合わない場合に生じる5つのリスク
1.在留資格認定・変更申請が不許可になる
海外から呼び寄せる場合や、留学生を正社員として採用する場合は、予定する仕事内容を記載して在留申請を行います。業務内容が申請する在留資格に該当しない場合、在留資格認定証明書が交付されない、または在留資格変更が不許可になる可能性があります。
すでに内定を出し、入社準備を進めた後で不許可になると、採用計画、配属、人員補充をやり直すことになります。
2.更新時に説明できず、就労継続が難しくなる
申請時には専門業務を行う計画だったとしても、入社後の実態が違っていれば、在留期間更新の際に問題となり得ます。入管庁は、許可された範囲を超えて就労した場合、更新を受けられないことがあると案内しています。
外国人本人にとっては、仕事を続けられないだけでなく、その後の在留手続にも影響する重要な問題です。
3.企業が不法就労を助長したと判断されるおそれがある
就労が認められていない外国人を働かせたり、許可された範囲を超える活動に従事させたりした場合、企業側が不法就労助長罪の対象となる可能性があります。
「本人が大丈夫と言った」「在留カードを持っていた」というだけでは十分ではありません。入管庁のQ&Aでは、雇用主が在留資格等を確認していないなどの過失がある場合、外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても処罰を免れないと説明されています。
自社の状況を簡易確認したい場合は「不法就労助長リスク判定システム」も利用できます。
4.採用・教育コストが無駄になる
許可が取れない、予定業務に配置できないとなれば、人材紹介料、申請準備、研修、住居準備などにかけた費用と時間を回収できません。問題が発覚してから別の仕事を作ろうとしても、会社の事業内容や本人の学歴・職歴との関係から、簡単には変更できないことがあります。
5.本人との認識違いが、早期離職につながる
申請書や求人票では専門職と説明されていたのに、実際には別の作業ばかり任される。この状態は、在留資格だけでなく、雇用契約と職場定着の問題でもあります。
本人が「聞いていた仕事と違う」と感じれば、会社への信頼を失い、早期離職やトラブルにつながります。在留資格との適合性を確認することは、法令順守と定着対策の両方に関係しています。
よくある仕事内容のずれ
| 採用時の説明 | 実際の配置 | 確認すべき点 |
|---|---|---|
| 海外営業・通訳 | 店舗の接客、配膳、清掃が中心 | 通訳・海外取引業務が活動全体の中心といえるか |
| システムエンジニア | 倉庫での仕分け・梱包が中心 | 専門知識を要するIT業務に実際に従事しているか |
| ホテルの企画・外国語対応 | 客室清掃、ベッドメイクが中心 | 専門業務とその他の業務の内容・割合・研修計画 |
| 外国料理の調理師 | ホール接客や一般的な調理補助が中心 | 「技能」で認められた熟練技能を要する調理に従事しているか |
| 留学生アルバイト | 複数の勤務先を合計して週28時間超 | すべての勤務先を合算した労働時間と資格外活動許可の範囲 |
表の例だけで一律に許可・不許可が決まるわけではありません。入管庁は活動を全体として判断しており、専門業務に必要な入社時研修として、日本人新入社員も同様の現場研修を行う場合など、専門業務以外の作業が一定期間認められることもあります。
反対に、専門業務はごく一部で、特段の技術・知識を要しない業務や反復訓練で従事できる業務が大半であれば、在留資格に該当しないと判断される可能性があります。「少し通訳もするから大丈夫」といった判断は危険です。
仕事内容の不一致を防ぐ5つの手順
- 中心業務と付随業務を書き出す
職種名ではなく、実際の作業と時間割合を整理します。 - 在留カード・指定書・資格外活動許可を確認する
在留資格、期限、就労制限、カードの有効性を確認します。 - 本人の学歴・職歴と予定業務を照合する
特に技術・人文知識・国際業務では、専攻や実務経験との関連性を確認します。 - 不明な場合は、就労資格証明書や在留資格変更を検討する
すでに就労資格を持つ転職者でも、新しい業務が現在の資格に該当するか不明な場合があります。 - 配属後も仕事内容を定期確認する
異動、店舗応援、組織変更で実態が変わったときは、その都度見直します。
採用前の全体確認については「外国人を採用すると決める前に確認する5項目」でも整理しています。
就労資格証明書で確認できること
就労資格証明書は、外国人本人からの申請に基づき、その人が行うことのできる就労活動を入管庁長官が証明する文書です。入管庁の2026年7月Q&Aでも、転職後の業務が現在の就労資格で行えるかを確認する方法として案内されています。
ただし、証明書を取ればどの仕事でも認められるわけではありません。仕事内容、本人の経歴、雇用契約などを整理して申請する必要があります。また、証明書の取得は法的な採用義務ではありませんが、判断が難しい転職案件では、企業と本人双方の不安を減らす手段になります。
仕事内容を変更する前にも確認してください
採用時だけでなく、異動・転勤・店舗応援・新規事業への配置転換でも、在留資格との適合性が問題になります。実際の職務内容を伺い、現在の在留資格で対応できるか、変更申請等が必要かを整理します。

