経営管理ビザの更新に懸念を抱いている方から、こういった相談をよく受けるようになった。
「技術・人文知識・国際業務に変更すれば日本に残れますよね?」 「高度専門職ビザに切り替えればいいのでは?」 「永住者の配偶者なので、そちらに変更できますよね?」
気持ちはよくわかる。しかし、これらの選択肢については「自分でできる」「簡単に変更できる」と思う前に、知っておいてほしいことがある。
断定的なことを言う立場にはないが、実務に携わる者として、注意を促しておきたい論点を整理する。
まず確認してほしいこと:変更申請は「活動内容の変更」を伴う
在留資格の変更は、手続きを変えるだけではない。
変更先の在留資格で認められた活動を日本で行うことを、入管庁に対して証明する手続きだ。経営管理ビザで認められていた活動(経営・管理)をやめ、変更先の在留資格に対応した活動に移行することが前提になる。
「ビザの種類を変えるだけ」という感覚でいると、思わぬところで問題が生じる可能性がある。
選択肢①:技術・人文知識・国際業務(技人国)への変更を考えている方へ
技人国は「雇われる側(従業員)」のための在留資格だ。経営管理ビザが「雇う側(経営者)」のための在留資格であることと、根本的に性格が異なる。
注意してほしい点
「自分の会社で自分が技人国の従業員として働く」という形での申請を検討している方がいる。
この点については、個別の状況によって判断が異なるため断定はできないが、技人国は指揮命令を受ける立場の従業員を想定した在留資格であることから、自分が代表取締役を務める会社で自分が従業員として申請する構造については、実務上、慎重に検討する必要がある論点だ。
「変更できる」と思い込んで準備を進める前に、専門家への確認を強くお勧めする。
選択肢②:高度専門職への変更を考えている方へ
学歴・職歴・年収等をポイント制で評価する在留資格で、70ポイント以上で認定される。経営管理ビザで在留していた期間の実績や保有する学歴・職歴がポイントとして評価される可能性がある。
注意してほしい点
高度専門職も「高度な専門的能力を持つ従業員・研究者」向けの在留資格だ。技人国と同様、自社での申請については実務上確認が必要な論点がある。
また、ポイント計算は個別の状況によって結果が大きく変わる。「自分は70ポイント以上あるはず」という判断を自己判断で行うことにはリスクがある。
選択肢③:身分系在留資格(永住者の配偶者等・定住者等)への変更を考えている方へ
日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者などの身分系在留資格を持っている、または取得できる状況にある場合は、経営管理ビザに依存せず在留を継続できる可能性がある。身分系在留資格は就労制限がなく、経営活動を続けることも可能だ。
注意してほしい点
永住許可を視野に入れている方に特に知っておいてほしい論点がある。
出入国在留管理庁の改正資料によると、2025年10月16日以降、経営管理ビザが改正後の基準を満たしていない場合、永住許可申請や高度専門職2号への変更は認められないとされている。
つまり経過措置期間中であっても、永住許可を目指す場合は改正後基準を満たしていることが条件になる。「経過措置があるから永住申請は後でいい」という判断には注意が必要だ。
選択肢④:スタートアップビザ(特定活動)を考えている方へ
一部の自治体が実施するスタートアップビザ(特定活動)を活用し、事業の立て直しや新規事業の立ち上げを行いながら、改めて経営管理ビザの取得を目指すという選択肢もある。
注意してほしい点
スタートアップビザは各自治体の制度であり、対象地域・要件・期間が異なる。また、経営管理ビザからスタートアップビザへの変更というルートが自分の状況に当てはまるかどうかは、個別の確認が必要だ。
「とりあえずスタートアップビザに変更してから考えよう」という発想で動くと、思わぬ制約に直面する可能性がある。
共通して言えること
どの選択肢も、「自分にはこれが使えるはず」という自己判断で動くことにリスクがある。
在留資格の変更申請は、不許可になった場合のリスクが大きい。不許可後の再申請は審査がより厳しくなる傾向があり、在留期間との兼ね合いで選択肢が急速に狭まることもある。
選択肢がある間に、早めに専門家に相談することが、日本で過ごしてきた時間を守る最も確実な方法だ。
阿部隆昭(あべ たかあき) 申請取次行政書士 / 東京都地域創業アドバイザー 行政書士阿部総合事務所 代表
経営管理ビザの更新・在留資格変更に関するご相談はお問い合わせください。
参照した一次ソース
- 出入国管理及び難民認定法(入管法)別表第一・第二
- 出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」
この記事のシリーズ
- 経営管理ビザ申請96%減——「外国人経営者が激減した」は本当か?
- 経営管理ビザ改正の本質——96%減は「結果」に過ぎない
- 経営管理ビザの経過措置期間中に何をすべきか
- 経営管理ビザ更新許可の可能性を高めるためのアクションチェックリスト


