「国内に働ける人がいるのに、なぜ外国人を受け入れるのか」
外国人雇用をめぐる議論では、このような疑問が出ることがあります。
完全失業者数176万人、就職希望者数212万人。合わせて国内に388万人の労働力があるのであれば、人手不足というのは本当なのか。外国人材を受け入れる必要があるのか。
今回の行政書士阿部隆昭の視点YouTube動画では、この疑問に対して、採用現場の実務から一つの視点をお話ししました。
第1章 「388万人いるのに、なぜ外国人なのか」という問い

「人手不足は嘘だった」
最近、このような言説を目にすることがあります。
その根拠として挙げられるのが、完全失業者数176万人、就職希望者数212万人、合わせて国内に388万人の労働力があるという見方です。
たしかに、数字だけを見れば疑問は自然に出てきます。
国内にまだ働ける人がいる。
それなのに、なぜ外国人材を受け入れるのか。
まず日本人を雇えばよいのではないか。
この問いそのものは、乱暴に否定すべきものではありません。
外国人雇用や移民問題を考えるうえで、多くの人が感じる疑問の一つです。
ただし、この議論で注意したいのは、企業の採用は「人数」だけで決まっているわけではないという点です。
国内に求職者がいることと、ある会社が必要としている人材を採用できることは、同じではありません。
この違いを見落とすと、「人はいるはずなのに、なぜ外国人なのか」という議論だけが先に進み、採用現場で実際に起きていることが見えにくくなります。
第2章 企業は人数だけで採用しているわけではない

採用現場では、応募者がいるかどうかだけで採用を決めているわけではありません。
企業は、目の前の応募者について、さまざまな点を見ています。
企業文化に合うか。
必要なスキルや経験があるか。
勤務条件が合うか。
チームで協力して働けるか。
定着して活躍してもらえるか。
今の現場を支える人材になり得るか。
これは、外国人材に限った話ではありません。
日本人を採用するときでも、まったく同じです。
応募してきた人がいれば全員採用する、ということにはなりません。会社には任せたい仕事があり、必要な勤務日数があり、求める経験があり、現場に入った後に周囲と協力して働けるかという問題もあります。
たとえば、会社が週5日勤務できる人を求めているのに、応募者が週3日勤務を希望している場合、その会社の採用条件とは合いません。
即戦力を求めている現場で、未経験者しか応募がない場合も同じです。
勤務地、勤務時間、給与、経験、資格、本人の希望、職場との相性。こうした要素が重なって、初めて採用判断になります。
つまり、企業は「人がいるか」だけではなく、「その会社が今必要としている条件に合うか」で採用を判断しています。
第3章 国籍を伏せて応募者を見たとき、誰を採用するのか

動画では、国籍を伏せた応募者AからEを例にして説明しています。
まず、ある会社が次のような人材を求めているとします。
週5日勤務ができる。
現場経験がある。
シフト対応ができる。
チームで協力して働ける。
即戦力として現場に入れる。
この条件に対して、応募者の中には、未経験で週3日勤務を希望している人もいます。
同業経験はあるものの、希望給与が高めで、勤務時間も日勤のみを希望している人もいます。
一方で、現場経験があり、週5日勤務ができ、シフト対応も可能で、業務連絡も取れ、チーム勤務への適性がある人がいたとします。
また、関連業務の経験があり、必要な資格を持ち、定着する意欲がある人がいたとします。
このとき、採用担当者や経営者は誰を選ぶでしょうか。
ここで最初に見ているのは、国籍ではありません。
会社が求めている条件に合うかどうかです。
採用判断の出発点は、「日本人か外国人か」ではなく、「この会社の仕事に合う人材かどうか」です。
もちろん、実際に外国人材を採用する場合には、在留資格、就労可能性、在留期限、社内体制、言語対応など、外国人雇用特有の確認事項があります。
しかし、その前段階として、企業はまず「この人を採用した場合、現場で活躍してもらえるか」を見ています。
第4章 国籍を後から確認しても、採用理由は変わらない

動画では、条件に合う応募者を選んだ後で、国籍を後出しする形にしています。
なぜ、この順番にしたのか。
それは、最初から国籍だけを前面に出すと、議論が極端になりやすいからです。
国籍を伏せて見れば、採用担当者が見るべきポイントは比較的はっきりします。
経験があるか。
勤務条件が合うか。
定着して働けるか。
現場に入れるか。
会社が必要としている役割を担えるか。
その結果、条件に合った人材が外国籍の方だった場合、それは「外国人だから優遇された」という話ではありません。
会社の条件に合う人材を選んだ結果、その人が外国籍だったということです。
ここを分けて考えないと、「国内に人数がいるのに、なぜ外国人なのか」という議論は、採用現場の実態から離れてしまいます。
企業が見ているのは、まず国籍ではなく、仕事との適合です。
この視点が抜けると、外国人雇用の議論は、現場の判断基準から遠くなってしまいます。
第5章 まとめ 採用は「人数」ではなく「条件」で決まる

国内に388万人の潜在的な労働力があるとしても、それだけで企業の人手不足が解消するわけではありません。
企業は、人数を見て採用しているのではなく、自社の仕事に合う人材を探しています。
週5日勤務ができるか。
現場経験があるか。
シフト対応ができるか。
チームで働けるか。
即戦力として現場に入れるか。
こうした条件に合う人材が限られるからこそ、採用現場では「人はいるのに採れない」という状況が起きます。
外国人材の受け入れは、この現実の中で出てくる選択肢の一つです。
もちろん、国内人材の活用、賃上げ、職業訓練、勤務条件の改善は引き続き重要です。
そのうえで、人数だけでは説明できない採用現場の判断基準を踏まえることが、外国人雇用を冷静に考える第一歩になると考えています。

第6章 国内人材の活用は当然重要である

ここで誤解してはいけないのは、国内人材の活用が重要ではない、という話ではないことです。
国内人材が働きやすい環境を整えることは、当然に重要です。
- 賃上げ。
- 職業訓練。
- 勤務条件の改善。
- 採用方法の見直し。
- 定着しやすい職場づくり。
こうした取り組みをせずに、ただ人が足りないと言うだけでは、企業側の努力として十分とはいえません。
また、国内人材の活用を進めるための補助金や助成金もあります。
日本人の雇用、育成、定着を支える仕組みも、当然に重要です。
一方で、企業が努力をしてもなお、必要な人材を確保できない現場があります。
求人を出しても応募がない。
応募はあっても勤務条件が合わない。
経験や資格が足りない。
採用しても定着しない。
現場をすぐに任せられる人材が見つからない。
こうした現実がある中で、外国人材の受け入れが選択肢の一つになることがあります。
これは、「日本人を軽視している」という話ではありません。
必要な条件に合う人材を探した結果として、外国人材が選択肢に入ってくるということです。
第6章 「人はいるのに採れない」という現場の現実
人手不足について議論するとき、人数だけを見ると、わかりやすく見えます。
完全失業者数がいる。
就職希望者もいる。
合計すれば一定の人数がいる。
それなら外国人材を受け入れる必要はないのではないか。
この見方には、一面のわかりやすさがあります。
しかし、採用現場では、人数だけでは判断できません。
会社の場所、勤務時間、給与条件、経験、資格、本人の希望、チームとの相性、定着の見込み。
こうした要素が重なって、初めて採用判断になります。
そのため、「人はいるのに採れない」という現象が起きます。
これは、数字だけを見ていると見えにくい現場の実情です。
企業が採用したいのは、単なる人数ではありません。
現場を支えられる人材です。
会社の仕事に合う人材です。
一定期間、定着して活躍してくれる人材です。
だからこそ、人手不足を考えるときは、「国内に何人いるか」だけでなく、「企業が必要とする条件に合う人材がいるか」を見る必要があります。
第7章 外国人雇用を一律に否定するだけでは課題は解決しない
外国人材の受け入れについては、さまざまな意見があります。
不安を持つ方もいます。
制度運用に疑問を持つ方もいます。
治安、社会保障、教育、地域生活、文化的な違いなど、考えるべき論点は多くあります。
そのため、外国人雇用を無条件に肯定すればよいという話ではありません。
一方で、一律に否定するだけでも、企業や地域が抱える現実は解決しません。
大切なのは、採用現場では何が起きているのか、企業はどのような事情で外国人材を受け入れているのか、国内人材の活用と外国人材の受け入れをどのように整理するのかを、冷静に考えることです。
外国人問題や移民問題は、感情的な対立になりやすいテーマです。
だからこそ、まずは前提を整え、言葉の意味を確認し、現場の実務を踏まえて議論することが必要です。
「人手不足は嘘だ」
「外国人を受け入れればよい」
どちらか一方の言い切りだけでは、現場の課題は整理できません。
外国人雇用・在留資格に関するご相談
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外国人材を受け入れるべきかどうか。
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