入管庁が日本語学校に就労確認義務化――企業として取り組むべきこと


日本経済新聞の報道では、出入国在留管理庁が、日本語学校に対し、留学生の就労状況を3か月ごとに面談で確認するよう義務付ける方向だとされています。

顕在化を強めている政府の外国人問題に対する方針、今回もその流れの一環なのでしょうか?

いわゆる「週28時間ルール」が現場で十分に守られていない実態を踏まえ、日本語学校側に改めて確認責任を明確化し、間接的に法令遵守を促そうとする流れとして読むべきではないかと考えています。

現場感覚としては、留学生本人が生活費や学費の事情から長時間就労に向かいやすく、受け入れる企業側も厳密な時間管理にまで踏み込まないまま雇用が続いてしまう場面があります。そうした中で、留学生を日常的に把握し得る立場にある日本語学校に確認義務を負わせることで、週28時間超過を放置しにくくする。今回の報道は、そうした政策の意図を感じさせます。以下、一次ソースをもとに整理します。

■ 1 日本語学校と留学生の関係は、単なる「学校と生徒」ではない

まず確認しておきたいのは、日本語学校は単に教育を提供するだけの存在ではないという点。文部科学省の認定日本語教育機関制度では、留学のための課程を置く日本語教育機関について、出席管理と在留継続支援の体制整備が求められています。そこでは、①生徒の出席率を適確に把握すること、②出席率が下がった生徒への指導を記録すること、③資格外活動許可を受けている生徒については、その活動先の名称を確認し記録すること、④在留期間や資格外活動の内容を把握して法令違反がないよう助言・指導すること、⑤退学や除籍時には適切に報告すること、などが示されています。

ここで重要なのは、公式資料の中に、「授業に出席せずアルバイト等を行っている者」という具体例がすでに明記されていることです。つまり国は、留学生の在留管理と就労実態の問題を別々のものとしてではなく、教育機関の運営や在籍管理の問題としても見ているわけです。また、経費支弁能力の確認が不十分であることにより、多数の資格外活動違反者を発生させている場合には、「著しく不適切な在籍管理」に当たり得るとも示されています。

さらに文部科学省は、大学等を対象とした通知の中でも、留学生を受け入れた教育機関は自ら責任を持って在籍管理を行う必要があると明言し、学業成績だけでなく、資格外活動の状況も的確に把握するよう求めています。これは大学向け通知ですが、考え方自体は、日本語教育機関に求められている在籍管理の方向性と共通しています。

要するに、日本語学校と留学生の関係は、単に授業を受ける・教えるというだけではありません。留学生が本来の目的である学習を継続できているか、在留資格に反する就労に向かっていないかまで含めて見ていく立場が、日本語学校には制度上求められているのです。

■ 2 週28時間の根拠は何か――「努力目標」ではなく資格外活動許可の条件

次に、留学生アルバイトの週28時間制限の根拠です。これは単なる学校内ルールでも、業界の自主基準でもありません。政府公認の日本留学情報サイト「Study in Japan」では、留学生がアルバイトをするには資格外活動許可が必要であり、その条件の一つとして、1週28時間以内(長期休業期間中は1日8時間以内)であることが明記されています。さらに、これに違反した場合には、処罰や強制退去の可能性があるとも案内されています。

加えて、「文部科学省の平成22年9月14日通知では、在留資格『留学』と『就学』の一本化に伴い、旧『就学』対象者に係る資格外活動許可の条件について、それまでの『1日4時間以内』を廃止し、旧『留学』側の条件である『1週28時間以内(長期休業期間中は1日8時間以内)』に一本化したことが示されています。ここからも、週28時間という上限が、制度上の条件として位置付けられていることが確認できます。」

文部科学省は近年の通知でも、資格外活動許可の要件である週28時間等が留学生に十分理解されておらず、在留期間更新許可申請が不許可となる事例があるとして、教育機関側に注意喚起しています。つまり、週28時間超過は「少しのオーバーならよい」という性質のものではなく、在留審査に直接影響し得る論点です。

この点を踏まえると、問題の本質は、留学生本人だけに「気を付けてください」と言って済む話ではありません。留学生は実際には複数のアルバイトを掛け持ちすることもあり、雇用先ごとに見れば把握しにくいことがあります。だからこそ、在籍先である日本語学校に、定期的に就労状況を確認させる意味が出てきます。学校が把握し、必要に応じて指導し、改善がなければ報告に進む。報道されている新たな運用は、この既存ルールを現場で動かすための一歩として理解するのが自然です。

■ 3 行政書士阿部隆昭の視点――これは「受入れ拡大」と「管理強化」が同時に進む日本の外国人政策の一場面である

日本の外国人政策は、しばしば「受け入れるのか、受け入れないのか」という二択で語られがち。ですが、実際の政策運営はもっと複雑です。文部科学省は2008年の「留学生30万人計画」で、関係省庁が連携しながら留学生受入れを進める方向を明確にしました。他方で近年は、日本語教育機関について認定制度を設け、出席管理や在留継続支援の体制整備を求めています。つまり、受入れを進めることと、受け入れた後の管理を厳格にすることが、同時に進んでいるのです。

私は、今回報じられている「3か月ごとの面談義務化」も、この流れの中で理解すべきだと考えており、外国人を受け入れているクライアント企業様にその旨お伝えしています。

日本語学校を増やし、留学生を受け入れるだけでは政策として不十分。その後に事実として、学習目的の在留が維持されているか資格外活動が学習に影響していないか法令違反が放置されていないかまで確認しなければ、制度は持続しません。

■ 4 外国人アルバイトを雇用している企業として取り組む姿勢

今回の制度改正は、外国人アルバイトを現在雇用している企業はどのように受け止めればいいのでしょうか?

管理責任がある日本語学校側によって、外国人の就労状況をヒアリングしているという事実をプラスに捉えれば、端的に不法就労助長リスクが軽減される方向性に向かうでしょう。というのも、受け入れ先企業にとって、留意しなければいけないのが留学生のダブルワーク。週28時間の計算は、タブルワークであればそのすべての働き先の就業時間の合計。なのですが、他の就業先に確認することも難しいので、企業側はあくまで外国人の申告ベースで判断せざるを得ないのが実情です。

例えば今回の改正を受けて、

「この前の日本語学校との面談結果、どうだった?」

といったような機会を設け、そこでのヒアリング事項を記録にしておくことも外国人アルバイトの雇用管理策としては有効に作用します。

今後、日本語学校側から留学生への管理監督が強化されるのであれば、留学生の意識は確実に変わるでしょう。それに伴って、企業として外国人に対するヒアリング内容も質も変化していきます。

今回の動きは、単に日本語学校側に業務負担を強いる話ではありません。留学生本人、雇用企業、日本語学校、そして入管行政の間にあった「見えにくさ」を減らし、週28時間ルールを実効化するための政策運営だと見るべきでしょう。

留学生のアルバイト問題は、本人の問題だけでも、雇用企業だけの問題でもありません。日本語学校に確認責任をより明確に負わせることで、法令遵守を全体として促していく。私は、そのような方向性として今回の制度改正を受け止めています。

行政書士阿部隆昭

■ 参考リンク(確認済み)

文部科学省「留学生30万人計画」骨子の策定についてhttps://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1420758.htm

文部科学省「認定日本語教育機関の認定等に関すること」https://www.mext.go.jp/a_menu/nihongo_kyoiku/mext_02666.html

文部科学省・出入国在留管理庁「出席管理及び在留継続支援体制に係る認定日本語教育機関の運営に関するガイドライン」https://www.mext.go.jp/content/20240412-mxt_nihongo01-000034783_3.pdf

文部科学省「外国人留学生の適切な受入れ及び在籍管理の徹底等について(通知)」https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1325305.htm

文部科学省「専修学校及び各種学校における留学生の受入れについて(平成22年9月14日)」https://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/senshuu/1304830.htm

Study in Japan「アルバイト」https://www.studyinjapan.go.jp/ja/work-in-japan/part-time-jobs/

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