外国人アルバイトの「週28時間」——「知らなかった」では済まない理由と、今日から使える運用設計


コンビニのレジ、飲食店のホール、倉庫の仕分け作業——外国人アルバイトはいまや日本の現場に広く存在している。採用担当者の多くは「28時間ルールがある」ことは知っている。しかし、その運用の実態を正確に把握できているかというと、そうではないケースが少なくない。

行政書士として13年間、外国人雇用の現場に関わってきた中で、最も「うっかりミス」が起きやすいのがこの週28時間の資格外活動ルールだ。今回はルールの骨格と、実務上の盲点、そして企業が今日から実装できる対策を整理する。


制度の骨格——まず押さえるべき3点

留学生などが持つ在留資格には「資格外活動許可(包括許可)」があり、この許可の範囲内でアルバイトができる。基本ルールは次の通りだ。

① 1週間28時間以内が上限。ただし教育機関の長期休業期間(夏休みなど)は1日8時間以内に緩和される。

② 複数の勤務先の合算で管理する。 ここが最も見落とされやすい点だ。「うちの会社では週28時間しか働かせていない」では不十分で、本人が他社でも働いている場合、その時間も合算して28時間以内に収まっている必要がある。留学生がダブルワークをしているケースは珍しくなく、全社合計で上限を超えていれば違反になる。

③ 「1週間」の起算点は固定されていない。 出入国在留管理庁のQ&Aでは「どの曜日から1週間を起算しても28時間以内」と示されている。つまり給与計算の締め日に合わせた「週」で管理するだけでは不十分で、任意の連続7日間でも28時間を超えないかを確認する必要がある。


統計が示す現実——例外ではなく、標準として設計せよ

日本学生支援機構の調査(令和3年度)によると、私費外国人留学生のうちアルバイトをしている割合は約7割に上る。

留学生アルバイトは「一部の特殊な事例」ではなく、日本の雇用現場に広く存在する標準的な雇用形態だ。であれば、その管理の問題も「個別の事情」として対処するのではなく、平時の雇用設計に組み込むことが必要になる。


週28時間と生活費のギャップ——背景を知る

時給の水準にもよるが、週28時間の上限で働いた場合、月の収入はおおよそ15万円前後になる。東京で生活するには、決して余裕のある金額ではない。

この現実から読み取れるのは、留学生本人に「もっと働きたい」という動機が自然に生じやすい環境にある、ということだ。これを「本人の問題」として片付けることはできない。制度設計として週28時間という上限が設けられている背景——留学という本来の目的を守るために、学習に支障のない範囲での就労を認めるという趣旨——を企業側も理解した上で、適切な関係を作ることが求められる。

本人が超過を望む動機があることを前提に、だからこそ企業側が管理する仕組みを持つ必要がある。


実務上の盲点と、それへの対処

盲点1:他社勤務時間の把握

最大の難所は、他社での勤務時間を把握できないことだ。本人への申告を求める以外に、現実的な方法はほぼない。ただし「申告を求めた」だけではなく、申告内容を書面で残しておくことが企業防衛として重要だ。

盲点2:週の起算点のずれ

給与計算上の「週」と、入管法令上の「任意の連続7日間」は一致しない。両方の管理が必要だという意識を持つことで、見落としのリスクを大幅に減らせる。

盲点3:長期休業期間の特例の把握

夏休みなどの長期休業期間は1日8時間まで緩和されるが、この特例を正確に理解せず、通常期と同じルールで管理してしまうケースがある。逆に、特例を誤解して通常期にも適用してしまうケースもある。学校カレンダーと連動した管理が必要だ。


今日から実装できる運用設計

採用時の確認を定型化する

  • 在留カードの原本確認(裏面の資格外活動許可欄を含む)
  • 在留期限の確認
  • 労働条件通知書の交付
  • ダブルワークの有無を本人に申告させ、書面で取得する

書面に残すことが重要だ。「確認しました」という口頭のやりとりではなく、記録として残る形にする。

週次チェックを仕組み化する

  • シフト作成段階で28時間にアラートを設定する
  • 任意の連続7日間での合計時間を確認する欄を設ける
  • 長期休業期間の開始・終了を管理カレンダーに組み込む

超過懸念が出た場合のエスカレーションを先に決めておく

超過の可能性が出た時点で誰に報告するか、本人への確認をどう行うか、再発防止をどう共有するか——この流れをあらかじめ決めておくことで、問題が起きてから慌てることなく対処できる。


重要な視点——「記録があるか」が問われる

不法就労助長罪のリスクについては、罰則規定として3年以下の懲役または300万円以下の罰金が定められている。しかし実務上それ以上に重要なのは、「確認していたか」「管理していたか」「記録が残っているか」という点だ。

企業がコンプライアンスに取り組んでいたことを示す記録の有無が、問題発生時の対応を大きく左右する。管理の仕組みを作ることは、罰則を避けるためだけでなく、企業として法令遵守に取り組んでいたことを証明するためにも必要だ。


まとめ

外国人材と真剣に向き合うとは、採用できるかどうかだけでなく、採用後も適法に働ける状況を維持できるかどうかを同時に考えることだ。

週28時間ルールは、知っているだけでは足りない。仕組みとして運用できているかどうかが、企業を守り、外国人アルバイト本人を守り、外国人との適切な共生関係を継続するための実質的な条件になる。


動画版はこちら:


参考にした公的資料

  • 出入国在留管理庁「就労資格に係る在留申請に関して問い合わせの多い事項についてのQ&A」
  • 厚生労働省「不法就労にあたる外国人を雇い入れないようにお願いします」
  • 日本学生支援機構「外国人留学生在籍状況調査及び日本人学生留学状況調査結果(令和3年度)」

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