停滞する23区の採用制度を、北区からアップデートする。|行政書士阿部隆昭

外国人政策

北区の現場課題から考える、公務員採用の国籍要件見直し

東京都北区では、多文化共生に関する取組がすでに進んでいます。北区が2025年に改定した指針では、令和6年(2024年)9月1日時点で外国籍区民の人口は初めて3万人を超え、国籍も100を超えると整理されています。また、総人口に占める外国籍人口の割合は7.6%(2024年時点)に達しており、外国人住民数は今後も増加傾向にあります。

北区は2025年に多文化共生指針を改定し、令和7(2025)年度からの10年間を期間とする新たな指針のもと、多文化共生施策のさらなる充実を目指しています。つまり北区では、外国人住民への対応はすでに一部の特別な話ではなく、区政の現実的な課題として位置付けられています。


現場の広範なニーズと、採用制度の乖離

実際、北区の多文化共生施策はかなり幅広い内容です。

  • やさしい日本語・多言語での情報提供
  • 日本語学習支援、相談、地域参加
  • 防災、子ども・教育、就労

これら生活に直結するテーマが並んでいます。区としても、言葉や習慣、文化の違いから地域で課題が生じていると明記しており、単なる理念ではなく、日々の暮らしの中で起きる行き違いへの対応が求められていることが分かります。

ここで一つ、見過ごせない論点があります。北区を含む東京23区の一般行政職は、今もなお受験資格がかなり狭いままだという点です。

特別区人事委員会の採用試験案内では、外国籍の人が受験できるのは「福祉、心理、保健師、児童福祉、児童指導、児童心理」の6区分に限られています。裏を返せば、一般事務や多くの一般技術系については、今も日本国籍が前提です。これは北区単独の決定ではありませんが、北区が現場で抱えている課題との関係では、無関係ではありません。


理念ではなく「現場の実効性」から見直す

私は、この論点を排外でも理念先行でもなく、現場の実効性という観点から見直すべきだと考えます。

北区の現場で本当に必要なのは、教育、福祉、生活相談、防災、窓口案内、地域との調整など、住民サービスの質を上げることです。現に北区自身が多言語対応や地域との接点づくりを施策に盛り込んでいる以上、そこを担う人材の入口が狭いままでよいのかは、当然に検証されるべきです。

もちろん、この問題は単純ではありません。国は2024年の答弁で、地方自治体における外国籍職員の採用について次のように述べています。

「公権力の行使または公の意思の形成への参画に携わる公務員には日本国籍が必要」との立場を示しつつも、「地域の実情に応じ自主的かつ適切に判断されるべきものであり、総務省として一般的な指針を定める考えはない」

つまり、国が一律に結論を与えるのではなく、各自治体が自分の地域の実情に照らして考えるべき論点だということです。これは北区にとっても、逃げずに向き合うべき課題だといえます。


提言:北区が進めるべき「三段階の検討」

では、北区で何を提案すべきか。いきなり賛成・反対の旗を振るのではなく、まず必要なのは事実を整理することです。そこで、次の三段階での検討を提案します。

① 「北区多文化現場実態調査」の実施

教育、福祉、生活相談、防災、地域振興、窓口対応の各分野で、どのような場面で言葉の壁や文化の違いによる支障が出ているのかを、区職員、学校、支援団体、町会、事業者の声も含めて洗い出します。これは理念のためではなく、住民サービスの実態把握のためです。

② 「職務の切り分け」の遂行

すべての職務を一括で語るのではなく、「公権力の行使や重要な意思形成に関わる職務」と、「住民対応や相談、案内、支援に重心がある職務」とを丁寧に分けて考えるべきです。北区としてもまず自前で整理する必要があります。

③ 「受験資格のあり方の検証」の開始

結論ありきで全面撤廃を叫ぶのではなく、まずは現場で必要性が高く、住民サービス向上に資する分野から、受験資格の見直し余地があるのかを検討します。23区全体の制度との兼ね合いはありますが、北区として問題提起し、共同で見直しを求めることは可能です。


結論:住民サービスを前に進めるために

この提案のポイントは、「外国人を優遇する」という話ではないことです。そうではなく、北区の現場で起きている困りごとに対して、より実効的に対応できる行政にするという話です。

住民にとって重要なのは、窓口で必要な案内が届くこと、学校で保護者との連絡が滞らないこと、防災情報が伝わること、相談がたらい回しにならないことです。そこに必要な人材の入口が不必要に狭いのであれば、見直しを検討するのは自然な行政課題です。

23区だけが、一般行政職で人材活用の幅を狭めたままでよいのか。北区の現場課題に照らして、受験資格と職務分離のあり方を検証する。

私は、この論点を理念のためではなく、北区の住民サービスを前に進めるための政策課題として提起したいと思います。


参考にした公的資料

住民基本台帳による東京都の世帯と人口(東京都総務局)

北区多文化共生指針【令和7年(2025年)改定版】(東京都北区)

北区多文化共生推進検討会(第5回)会議資料(令和6年10月2日)

特別区人事委員会採用試験案内(令和7年度)

参議院質問主意書答弁書(令和6年)

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